(1)非コンパクトリーマン多様体の逆問題を研究した.有界部分には任意の計量を許し,非有界部分は与えられた標準的な計量に漸近するような多様体のラプラシアンの連続スペクトルを研究し,S行列から多様体を再構成する逆問題を解決した.無限遠近傍での計量は考えうる限りで最も一般なものを許し,かつ,微分可能多様体のみならず錘状の特異性を許容する一般なものである.さらに非有界部分はその体積が無限大に増大する場合のみならず,体積が0に収束するカスプも許容しており,連続スペクトルをもつ多様体上の逆問題としては自然な範囲をすべて尽くしていると考えられる.(2)周期的な格子の有限部分を摂動したときの離散ラプラシアンの連続スペクトルを研究し,S行列から摂動項と,頂点に与えたポテンシャルや格子の欠損を決定する逆問題を解決した.特に現代の固体物理学における重要な物質であるグラフェンを扱うことができる.(3)周期的な格子系を局所的に摂動した系の離散シュレーディンガー方程式の解が,メッシュサイズを0に近づけたとき連続シュレーディンガー方程式の解に収束することを証明した.特に散乱問題を記述する連続スペクトルに対応する解を扱うことができるのが特徴である.(4)外部領域における Maxwell 方程式に対して媒質に対する一般的な仮定のもとにS行列から境界の Betti 数が定まることを証明した.(5)回転面でのスツルムーリュビル型方程式に対するゲルファントーレビタン理論を研究し,スペクトルデータと曲面の間の解析的微分同相写像を構成した.(6)2つの平行な層において波の速度が異なる層状領域におけるラプラシアンの連続スペクトルを研究し,定常波動方程式の解の一様な漸近展開を導いた.
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