研究実績の概要 |
本年度は主として以下の3つの成果を得た. 1) 熱方程式の半空間におけるDirichlet境界値問題およびNeumann境界値問題に対して最大L1正則性を考察した. 非斉次な外力, 初期条件, および境界条件に対して時間L1, 空間斉次Besovの最大L1正則性クラスで解が一意に存在することを示した. 非斉次境界条件は時間についてTriebel-Lizorkin空間を課したが, この空間は逆に解に対して最適なデータのクラスであることも示された. Littlewood-Paleyの時間方向と空間接方向の2進分解を用いて境界ポテンシャルを概直交化するアイデアを用いた. 2) ラグランジェ座標系でのNavier-Stokes方程式の初期値問題を, スケール不変な関数空間である, 時間についてL1, 空間について可微分指数-1+n/p, 可積分指数pの斉次Besov空間で考察した. nは空間次元である. 低周波部分に制限をつけた初期値に対して非線形項の多重発散構造により, オイラー座標系の場合と同様に無限大を除く1以上のすべてのpに対して時間大域的に適切となることを示した. この考察は, 後にNavier-Stokes方程式の自由境界問題で用いられる. 3) 2次元外部領域におけるLr-ベクトル場のHemhlotz-Weyl分解定理を考察した. Lrに属する任意のベクトル場は, 境界の閉曲線上で単位法線ベクトルと直交するLr-調和ベクトル場および 回転項と勾配項に分解される. この分解はすべての1 < r < ∞に対して成り立つが, 表現の一意性が成り立つための必要十分条件はrが2以下である. ここで2は2次元のPoisson方程式の斉次Dirichlet境界問題の弱解の可解性の閾値である. 境界上で法線ベクトルと平行なLr-調和ベクトル場に対しても同様の分解定理が成立する.
|