研究課題/領域番号 |
16H03950
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
小林 健太 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (60432902)
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研究分担者 |
土屋 卓也 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (00163832)
劉 雪峰 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50571220)
高安 亮紀 筑波大学, システム情報系, 助教 (60707743)
渡部 善隆 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (90243972)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精度保証付き数値計算 / 有限要素法 / 誤差評価 |
研究実績の概要 |
平成29年度において得られた成果は以下の通りになります。 小林健太(代表者)および土屋卓也(分担者)は非適合有限要素法の誤差評価について研究を進め、必ずしも正則性条件を満たさないような三角形分割上でのCrouzeix-Raviart有限要素法およびRaviart-Thomas有限要素法について誤差評価を得ることに成功しました。非適合有限要素法は、実際に広く用いられているにも関わらず、三角形分割に制限を課さない誤差評価は今まで得られていませんでしたので、この結果は実用上も重要です。 渡部善隆(分担者)は、重調和型非線形方程式の解に対する精度保証付き数値計算の枠組みを理論面・実用面から整備しました。これは今後、流体方程式の精度保証を考える上で基礎となる重要な結果です。また、Poisson方程式の有限要素近似解に対する精度保証付き高精度誤差評価に成功しました。この成果は、他の方程式に対する精度保証の高精度化にも応用できる可能性が高いと考えられます。 劉雪峰(分担者)は、Stokes方程式の事前誤差評価とStokes微分作用素の固有値評価を中心に研究を行い、特に、3次元領域におけるStokes微分作用素の固有値の厳密な下界と上界を得ることに成功しました。また、Stokes境界値問題の有限要素法解について、Hypercircle法を用いることで事前誤差評価に成功しました。さらに高安亮紀(分担者)は、半群理論を利用した放物型方程式に対する解の精度保証付き数値計算方法を応用し、非線形放物型方程式の時間変数を複素数に拡張した方程式の解について精度保証付き数値計算を試みました。また、双曲型方程式の一種である移流方程式に対する解の精度保証付き数値計算に成功しました。劉および高安の結果は、流体問題やその他、複雑な構造を持つ方程式への精度保証付き数値計算の応用に向けて重要であるといえます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度においては、小林健太(代表者)と土屋卓也(分担者)は四面体要素上の補間誤差定数の精密化および直方体要素の補間誤差定数の導出について研究を行うとしていましたが、四面体要素については研究成果が得られたものの、直方体要素については研究が進展しませんでした。そのかわり、応用上も重要な非適合補間誤差および非適合有限要素法の誤差評価について予想以上の進展が見られました。 渡部善隆(分担者)は、流体方程式への精度保証付き数値計算の適用に向けて研究を行うとしていましたが、重調和型非線形方程式の精度保証に成功し、研究は予定通り進行しています。 劉雪峰(分担者)は、固有値問題について研究を進める予定でしたが、Stokes方程式を中心に研究成果をあげています。 高安亮紀(分担者)は、空間2次元の放物型方程式に対する精度保証付き数値計算について研究するとしていましたが、空間2次元への拡張はできなかったものの、双曲型方程式の一種である移流方程式に対する精度保証に成功するなど、重要な成果を得ています。 以上のように、当初に見込んだ研究が一部、進展しなかったした部分もありますが、予定していなかった方向に研究が進展した部分もあり、総体的に見れば研究は概ね順調に進展しているといえます。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、平成29年度から引き続き、研究代表者および研究分担者の研究成果を互いにフィードバックしながら研究を進めていきます。具体的には、小林・土屋は、非適合要素の補間誤差評価や非適合有限要素法の誤差評価についてさらに研究を進め、それらの結果を用いることで、渡部は流体方程式など、高安は放物型方程式などの、有限要素法を用いた非線形問題の精度保証付き数値計算への応用を研究します。渡部・高安は逆に、精度保証付き数値計算を適用する上で必要な誤差評価の情報を小林・土屋にフィードバックします。劉は引き続き固有値問題についての研究を進展させ、重調和方程式や空間3次元の方程式、または非凸な領域における固有値問題などの研究に取り組みます。劉は研究結果を、特に非適合補間の誤差評価に応用して、小林・土屋の補間誤差評価についての研究や、渡部・高安の取り組む様々な方程式の精度保証の研究にフィードバックします。
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