研究課題/領域番号 |
16H03952
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 克弘 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40213722)
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研究分担者 |
藤沢 潤 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (00516099)
小田 芳彰 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90325043)
田村 明久 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50217189)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラフ理論 / 極値問題 / 疎グラフ / 1-平面グラフ |
研究実績の概要 |
極値グラフ理論の中心的研究対象であるハミルトン閉路をはじめ,それを緩和した2因子,全域木,マッチング拡張性について研究を行った。平面グラフや閉曲面上に埋め込まれたグラフは,その制約上自然に疎なグラフとなる。4連結平面グラフはハミルトン閉路を持つ,というTutteの定理を起点として,平面グラフの種々の部分構造に関する研究を行った。4連結性を緩和したときや,平面性の条件を緩和したときに,ハミルトン性がどの程度保存されるか,などについて一定の成果を得ることができた。 各辺に1回の交差までを許して平面上に描くことのできるグラフは1-平面グラフと呼ばれる。このようなグラフも辺数が頂点数に線形な関数で抑えられるが,組合せ的には平面グラフとは性質が大きく異なる点もある。与えられた頂点数において辺数が最大であるような1-平面グラフについては,マッチング拡張性について結果を得た。また一般の1-平面グラフについても議論を始めた。 以上のような研究成果を発表する機会として,また国内外の関連研究者との情報交換の場として,以下の2つの国際研究集会に組織委員として参加した。(1) The Japanese Conference on Combinatorics and its Application, (2018年5月, 仙台), (2) 6th Pacific Workshop on Discrete Mathematics, (2018年11月, ハワイ). (1) では多くの海外研究者と議論する機会が得られ,また (2) では,1-平面グラフに関する研究発表を行うとともに,密な研究討論により今後の研究の進展に向けた大きな一歩を踏み出すこととなった。また2019年2月には,慶應義塾大学において若手研究者らを交えた研究集会を開催し,関連する若手研究者との情報交換と研究討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,疎なグラフに含まれる部分構造について,新たな視点での理論構築を目指しているが,今年度は位相幾何学的性質と深くかかわるもののうち,従来のようにマイナーに関して閉じていないグラフの族である,1-平面グラフに着目した研究に進展があった。とくにそのようなグラフにおける完全マッチングの拡張性に関して成果があり,国内外の研究者と討論を重ねていることから,進捗が見込まれている。平面グラフの部分構造に関する研究についても,Tutteの定理を起点とした研究において一定の成果が挙がっている。また研究実績の概要では触れなかったが,森グラフに関する極値問題については,昨年度に引き続き Simonovitsらの研究に関する調査を進めている。以上の理由により,研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,平面グラフの拡張として,1-平面グラフに関する研究を進めた。1-平面グラフとは,各辺に1回までの辺の交差を許して平面に書くことのできるグラフで,平面グラフより辺数を増やすことができるが,依然として疎なグラフとなる。これまでの1-平面グラフの研究は,最適1-平面グラフと呼ばれる極値的なグラフのみを扱っていたため,多くの場合,平面グラフと同様の議論が用いられていた。しかし,1-平面グラフはマイナーに関して閉じていない,すなわち辺の縮約が1-平面性を必ずしも保存しないことが大きな特徴となっており,従来平面グラフで使われていた議論がそのまま適用できないケースが散見される。例えば,連結度の高い1-平面グラフが高いタフネスを持つかについてすらよくわかっていない。タフネスが高いことが保証されると,既存の結果から,種々の性質のよい部分構造の存在が保証される。今後はこのような点にメスを入れ,1-平面グラフにおいて新たな極値問題の展開をはかる。 森グラフの極値問題に関連して,Simonovitsらの「疎なグラフに対するregularity lemma」についてさらに調査を進める。Simonovitsらの構造定理は,まず次数の高い頂点を抜き出し,残りをregularity lemmaにあるような正則分割を行っている。所望のtreeを見出す際にexpanderの概念が重要な役割を果たすが,expanderへの分割の汎用性,とくにtree以外の構造に対しての適用可能性についてはまだ不透明な部分も大きく,本研究との関係においてさらなる調査研究を継続していく。結果として,グラフの族に対する極値問題の進展につなげたい。
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