研究課題
銀河面をサブミリ波の輝線でサーベイ観測を行い、分子雲の形成と進化の解明を目指した研究を行っている。本年度は、研究の初年度であり、サーベイ観測のための装置開発を中心に研究を進めた。先ずは、30cmサブミリ波サーベイ望遠鏡の既存の500GHz帯の サイドバンド分離型(2SB)受信機の中間周波数帯域を、20GHzまで拡大し、一酸化炭素CO及び中性炭素原子CIの輝線が同時に観測できるシステムを構築した。また、CIの高励起輝線の同時観測に向け800GHz帯の2SB受信機の開発を開始した。世界的に800GHz帯の受信機は、雑音性能の制約から、DSBモードのミキサーしか存在していない。ALMAバンド10用に開発された、DSBミキサーの入力にRFハイブリッドを装着して、 2SB化を目指した。計算機シュミレーションにより、雑音温度の増加を避けながら信号を分割、位相差を与えるハイブリッドの設計を進めた。装置開発と平行して、サブミリ波でのサーベイ観測に向けた、銀河面の観測も進めた。野辺山45m望遠鏡やJCMT15m鏡のCOデータを用いて、超新星残骸に付随した分子雲の観測を進めた。野辺山45m鏡の高い空間分解能 (17")を生かし、比較的遠い超新星残骸Kes79の分子雲の、空間分布や速度構造を調べ、相互作用による膨張を示唆する分子雲を特定した。JCMTの CO 3-2 データとの強度比を計算することで、その分子雲の輝線強度比 R3-2/1-0が高いことを示し、相互作用が強く示唆されている。X線との相関を調べ、宇宙線加速の研究の場としても、この Kes79領域が有用な事を示した。
2: おおむね順調に進展している
研究は装置開発と観測の両面から成る。装置開発では、500GHz帯冷却受信機は増幅器の広帯域化を終え、16GHz帯以上のIF帯域を有する受信機となり、CO 4-3輝線とCI輝線の同時観測が可能となった。また、800GHz帯受信機の2SBハイブリッドの開発に着手した。観測面においては、サブミリ波輝線でのサーベイに向けた観測的な研究を、銀河面、超新星残骸、系外で進めた。研究の成果は、学会発表及び論文として公表した。
500GHz帯の2SB冷却受信機の詳細な性能評価を進める。800GHz帯2SB受信機に関して、ハイブリッドの製作を進める。銀河面のサブミリ波観測に向けた、観測的な研究も引き続き推進する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Publication of the Astronomical Society of Japan
巻: 68 ページ: 76-1-12
https://doi.org/10.1093/pasj/psw072