研究課題
太陽観測衛星「ひので」などの観測により、6千度の太陽表面(光球)と100万度のコロナの境界に位置する彩層・遷移層が、様々な磁気活動現象で満ち溢れていることが明らかになった。これらの活動現象は、コロナの加熱に重要な役割を果たしていると考えられ、既存の観測装置では不可能な彩層・遷移層での磁場観測が急務となっている。そこで我々は、観測ロケット実験CLASPを開発し、平成27年9月に世界初のライマンα輝線 (波長 121.6 nm) での偏光分光観測を成功させた。本研究は、打ち上げ後回収したCLASP観測装置を改良し、ライマンα輝線よりも精度よく磁場情報を取得できると期待される電離マグネシウム線 (280 nm) 用の高精度偏光分光観測観測装置・CLASP2の開発を行うものである。平成29年度は、新規に開発したフライトモデルを、CLASP打ち上げ後回収して日本へ返送していた観測装置に組み込んだ。そして、望遠鏡、偏光分光器それぞれの部分での光学調整、光学性能評価試験を実施し、要求通りの光学性能を有していることを確認した。なお、一部のフライト品については、光学調整試験の結果を踏まえて製作し、観測装置へ組み込んだ。国立天文台での開発と並行して、分子科学研究所の放射光施設(UVSOR)にて、フライトミラーと同時にコーティングを行なったウィットネスサンプルの反射率と偏光特性確認試験も行い、想定した性能を有していること、観測装置のスループット確定に必要な情報を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度は、新規に開発したフライトモデルを、CLASP打ち上げ後回収して日本へ返送していた観測装置に組み込んだ。そして、望遠鏡、偏光分光器それぞれの部分での光学調整、光学性能評価試験を実施し、要求通りの光学性能を有していることを確認した。いずれの試験も、順調に進んでいること、また、宇宙科学研究所の小規模計画としてCLASP2が採択されその開発はさらに勢いを増していることから、想定以上に進展していると評価した。
今年度実施した光学調整試験に引き続き、今後は、新規開発部分の振動試験、偏光分光器の偏光較正試験、望遠鏡と偏光分光器を結合しての全系での性能確認試験を実施し、国内での開発を完了させる。そして、打ち上げが行われる米国へ、観測装置を出荷する。まず、観測装置をNASA/MSFCに輸送し、そこでフライトコンピューターとの結合試験を行う。その後、打ち上げ場のあるホワイトサンズミサイル発射場へと観測装置を輸送する。そこでの観測ロケットとの噛み合わせ試験を経て、約5分間の観測を実施する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)