研究課題/領域番号 |
16H03967
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末包 文彦 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10196678)
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研究分担者 |
丸山 和純 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80375401)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニュートリノ / ステライルニュートリノ / JSNS |
研究実績の概要 |
(1) 液体シンチレーター構成の決定: 実際に原子炉実験で使用している液体シンチレーターの検討を行なった.これらの液体シンチレーターはDINを用いた液体シンチレーターより粒子識別能力は劣るが,実績があり安価に手に入るため,この可能性を追求した.これにより液体シンチレータ調達の自由度を広げることができた. (2) 東北大サイクロトロンラジオアイソトープセンター(CYRIC)での高速中性子バックグランド測定実験の解析:2016年11月に行なった実験で,NaI 検出器による高エネルギーγ線バックグラウンドの解析を行なった.この結果このγ線バックグラウンドは予想の範囲内であり,実験準備をそのまま継続できることがわかった. (3) アクリルタンク構造の決定:アクリルタンクの設計及びアクリルタンクとステンレスタンクの接続部分の設計を行なった. アクリルの強度を勘案し,アクリル部材の厚みの検討,補強構造の検討などを行なった.光電子増倍管取り付け構造のモックアップを製作し,テストを行なった.これらにより,アクリルタンクの最終仕様を決定し,2018年度始めに入札を開始することができるようになった. (4)ダブルショー実験の光電子増倍管システムの再利用可能性の検討: 本研究代表者がフランスで行なっているダブルショー実験が2018年度に終了し,その400本の高性能大口径光電子増倍管システムを利用できる可能性が生じた.それに合わせその再利用の可能性を検討し構造的に問題ないことが分かった.この大口径光電子増倍管を利用することによりエネルギー分解能・粒子識別能力を改善することが可能になる. (5)今年度末包はフランスのブレースパスカスチェアーとしてフランスの5研究所で本研究に関連するセミナーを行なった.(6) TDRをPTEPに投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により,液体シンチレーター,アクリルタンク,光電子増倍管システムの設計,バックグラウンドの評価などに目処がついた.これによりJSNS2実験ではすでに実験装置の建設を開始している.(本研究は,検出器開発であり,実際の建設は研究分担者の丸山和純氏が研究代表者である基盤Sにより行っている). ステンレスタンクの建設は2017年度に開始し同年度内に終了した.液体シンチレーター,光電子増倍管システムも2018年度中に調達可能になる予定である. これまで全体スケジュールの大きな遅れやトラブルはなく,本研究はおおむね順調に進展しているということができる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で検出器要素の検討・開発はほぼ終了し,今後は実験装置の本格的な建設の段階に入る.それに伴い本研究では今後アクリルタンク仕様の決定を行う.アクリルタンク本体の構造はほぼ決定しているが,ステンレスタンクとのインターフェース部分の検討・設計が残っている. ステンレスタンク内面に光電子増倍間を敷き詰め,その中にアクリルタンクを設置する.ステンレスタンクにアクリルタンクの支持構造を取り付け,アクリルタンクをそれに固定する.また,上部では,ベローズを介してステンレスタンクに固定する.このようなアクリル構造の検討・設計を行う. 光電子増倍管は,フランスで行っているダブルショー実験のものを再利用する予定である.ダブルショー実験装置から200本の10インチ光電子増倍間を取り外し,箱に入れ日本に輸送する.その準備のため,研究代表者がフランスに行き,解体手順の検討,スケジュールの調整,運送業者との打ち合わせ,必要な道具や人員の確保などを行う.実際の作業では,学生や東北大の技術職員を現地に派遣する. 本研究成果を基にして2017年度終わりにPTEPに投稿したTechnical Design Reportをreviseする.本論文は近々掲載予定である. 2019年には実験を開始し,数年以内には,ステライル ニュートリノ問題に決着をつける.
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