研究課題
本年度はBelle実験の全データを用いて、B中間子の輻射崩壊B→Xs gammaでのアイソスピン対称性の破れとCP対称性の破れの世界最高精度測定を行った。この過程でアイソスピン対称性の破れが小さいことが判明したことから、B中間子の輻射崩壊の崩壊分岐比の非摂動的理論誤差を減らせ、標準模型を超える物理例えば超対称性粒子や荷電ヒッグス粒子に対して強く制限を与えることが可能となった。また、新たなるCP対称性の破れの測定量ΔACPの測定を行い、この値も小さいことから超対称性模型や拡張ヒッグス模型へ強い制限を与えた。この測定量が有限であれば General 2HDM において電弱バリオジェネシスを起こすCPの破れになることが理論的に判明し、Belle II 実験での測定とHL-LHCやILCでのボトム湯川の測定により、この模型を検証することが可能である。また、レプトンフレーバーの破れを持つ電弱ペンギン崩壊の探索を行い、世界最高精度の制限を与えた。Belle II 実験では B->K* gamma の解析と B->Xsl+l-の解析を開始した。また、レプトン同定の性能を測定するべく、two photon ee->eell の解析を行った。ピクセル検出器の開発においては大きな進展および方向性の転換があった。PIXORのアナログ回路に関して寄生容量が大きいため、新たなピクセル検出器のコンセプトを発明した。アナログ回路は単純なアンプ・シェイパー・ディスクリ回路で構成されPIXORのようにアナログORをしない。デジタル回路はPIXORをベースとした回路で、高速でトリガーに同期した読み出しが可能で、位置分解能がPIXORより良く、さらにPIXORの問題であった寄生容量を回避することが可能である。これはSOIの特徴を生かしたアクティブマージを開発したことにより可能となった。
2: おおむね順調に進展している
物理解析に関してはB->Xs gammaのアイソスピン対称性の破れとCP対称性の破れを世界最高精度で測定したこと意外にも、当初の予定には入っていないレプトンフレーバーの破れを持つ電弱ペンギン崩壊 B->K* e mu の探索などの進展がある事から「当初の計画以上に進展している」と言って良い。しかしピクセル検出器の開発においては寄生容量の問題に決着をつけるのが遅くなりながらも、新たなピクセル検出器のコンセプトを発明するなどの進展があり「やや遅れている」。以上を総合的に判断し、おおむね順調に進展している。
物理解析においては予定より進展したことから、現在の推進体制でも予定以上の結果が出ると予測される。現在、世界的に注目の的である電弱ペンギン崩壊でのレプトンフレーバーユニバーサリティーの破れに関する解析を中心に行う。さらにBelle II実験での物理解析も進展させる。ピクセル検出器に関しては、Belle II 実験に必要なピクセル検出器のパラメータを決定し、最初のチップの設計を行う。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件)
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