研究課題/領域番号 |
16H03970
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
難波 俊雄 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (40376702)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 高性能レーザー / パルス磁石 |
研究実績の概要 |
この実験の目的は、強磁場による真空の複屈折の観測である。量子電磁気学が予言する真空複屈折の世界初観測を目指すとともに、ダークエネルギー等の未知の場の探索も視野に入れている。 本年度は、強磁場による真空複屈折を測定するためのプロトタイプの実験装置を組み立て、それを用いて磁場中の複屈折のテスト測定をおこなった。プロトタイプ装置には、 11T×20cmのパルス磁石を1台とフィネス300,000のファブリペロー共振器を組み合わせた。共振器の安定性は、透過光の強度をモニターし、PDH法で入力レーザーの波長にフィードバックをかけることで向上させた。パルス磁石励磁時の電磁ノイズや音響、振動ノイズが共振器へ影響しないように、組み合わせにあたっては、力学的に切り離して別のステージに乗せ、電気的にも絶縁をおこない、磁石は磁気シールドで覆った。共振用の真空接続部分のダンパー等にも工夫をこらした。 液体窒素で冷却しながら約100パルス励磁して、テスト測定をおこなった。テスト測定に際しては、真空の複屈折測定に併せて、薄い窒素ガスの複屈折測定もおこなった。実験装置は問題なく動作し、期待通りの性能を発揮することが確認できた。プロトタイプ装置であるため、真空の複屈折を測定するには感度不足であるが、当初の見込み通りの感度であった。窒素ガスの測定値は理論予想値と照らし合わせて問題ないことが確認できた。これにより、今後のスケールアップで真空複屈折を測定できる筋道が示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、プロトタイプの実験装置を組み立て、それを用いて実験の到達感度の確認ができた。装置のチェックのために当初はヘリウムガスの複屈折を使用する予定であったが、窒素ガスの方が理論的に性質が良く分かっているため、窒素ガスでの測定に変更した。窒素ガスでの測定は予想通りの結果が得られたため、実験全体の進捗への影響は無い。
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今後の研究の推進方策 |
プロトタイプの実験装置をスケールアップして、真空の複屈折を測定できる感度まで向上をはかる。主な向上点は、レーザーの蓄積パワーの向上と磁場の強度向上の二点である。レーザーの入力パワーを上げ、共振ミラーの反射率を上げる(フィネスを上げる)ことで共振器内部へ蓄積する光子の量を増やす。また、パルス磁石の線材を銅線から銀銅線に変更することで力学的強度を上げ、パルス磁場を15T超まで印加可能にする。 最終的には、半年程度の測定で真空複屈折を測定する。
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