研究課題
この実験の目的は、強磁場による真空の複屈折の観測である。量子電磁気学が予言する真空複屈折の世界初観測を目指すとともに、ダークエネルギー等の未知の場の探索も視野に入れている。本年度は、プロトタイプの実験装置の改良をおこない、実験の探索感度を大幅に向上させた。まず、パルス磁石の駆動電源の充電系を改造し、充電スイッチ時における高電圧部でのサージノイズを削減した。また、レーザー制御系の周囲の磁気シールドを充実させ、レーザーの安定度を飛躍的に向上させた。レーザーに関しては、PDH法のフィードバックにおけるフィルターも最適化しており、こちらも安定性の向上につながっている。これらの改良に加え、液体窒素を自動で補充する装置や、共振器のロックが外れたときに自動で復帰するシステムなども組み入れて、長期間(数日程度)の測定が可能となった。改良後の装置を使用して、11月に約1日間のデータ取得をおこなった。印加したパルス磁場は6000回であり、このクラスのパルス磁石としては世界最高の頻度と回数である。この測定データを解析したところ、まだ真空の複屈折が見える領域まではきていないが、昨年度の探索と比べて、感度が約2桁向上していることが確認できた。この感度は同じくパルス磁場を利用した海外の先行実験とほぼ同じ感度である。この解析においては、ノイズ下での波形を解析してシグナルを抜き出す独自の手法を開発した。この解析手法と結果についての論文は現在執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ当初の予定通り研究を遂行している。
更なる探索感度の向上をはかるとともに、真空の複屈折現象の世界初観測をおこなう。感度の向上は、更なるレーザーの安定化、パルス磁石の強度の向上、測定の統計量の増大によっておこなう。また、今後は残留ガスによるバックグランドが見えてくることが予想されるため、真空チェンバー内の真空度の向上もおこなう。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
The European Physical Journal D
巻: 71 ページ: 308
10.1140/epjd/e2017-80290-7
https://tabletop.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/