高精度レーザーとパルス磁石を組み合わせ、「真空」の複雑な構造、特に量子電磁気学で予言されている真空の複屈折を明らかにするための装置の改良をおこなった。今年度は真空の歪みを検知するためのレーザーシステムの安定性の向上とノイズの削減をメインにおこなった。高フィネス共振器への入射光を安定化させるためにAOM(音響光学変調器)を導入した。また、偏光板の挿入や直流電源の強化によってフィードバック系のノイズ削減もおこなった。これにより、共振器からの出力強度雑音に対する安定性を1桁程度向上させた。一方、真空を歪ませるためのパルス磁石に関しては、レーストラックコイル両端で生じる強磁場によるストレスを軽減するための設計改良をおこなっている。試作機での試験により、18T励磁への道筋ができ、これによる感度の大幅向上も期待できる。 高感度測定のための長期運転(~1ヶ月)を見据えて、共振器の自動ロックシステムを製作した。また、共振の長期ドリフトのキャンセル制御も開発した。これにより、共振器のロックが外れても自動復帰し、液体窒素による冷却状態で1週間以上無人放置しても、共振器の出力強度は±5%以内で十分安定であることが確認できた。 これらの改良により、世界最高感度で「真空」の構造を探索する目途が立った。今後はこの装置で長期測定し、世界初の真空複屈折検出を目指す。 これらの成果は、日本物理学会秋季大会と総会において、のべ3回の口頭発表をおこない報告してある。
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