本研究では,現在1Hz以下の低周波数帯で世界最高感度を持つねじれ型重力波望遠鏡TOBAの高感度化と,本格的な観測・データ処理システムを用いた観測運転を行い,KAGRA(かぐら)などの第二世代大型干渉計型重力波望遠鏡で得られたデータと組み合わせたデータ解析手法の開発研究を行うことを目的とする.その結果,KAGRA等が主な観測ターゲットとしている連星中性子星合体現象に対する早期アラートの実現など,低周波数帯における多様な重力波天体現象観測の可能性を広げるとともに,低周波数帯における重力場勾配雑音の除去など,大型レーザー干渉計の低周波数感度を向上させる手法を開発することを目指す. 平成28年度は、TOBAの高感度化の研究を進めた。懸架系における自由度間のカップリング、光学系のモノリシック化を中心課題とし、それぞれ進展があった。懸架系における自由度間のカップリングに関しては、ねじれ振り子懸架系における自由度間のカップリングを系統的に調べた。その結果、1次の効果として現れるカップリングを洗い出し、それらを定式化した。その過程で、懸架された試験質量などの傾きを調整することでカップリングを低減できることを見出した。それらの考察をもとに傾きを調整することで、カップリングの低減とTOBA感度の向上に成功した。光学系のモノリシック化に関しては、パワーリサイクリング・マイケルソン干渉計構成での光学系を20cm角の光学台上に構成する研究を進めた。鏡などの光学素子を紫外線硬化樹脂で接着して固定することで光学系をくみ上げ、この干渉計を動作させることに成功した。また、アラインメント調整など、光学系くみ上げ時のノウハウの蓄積も進めた。
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