研究課題/領域番号 |
16H03973
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 雅樹 東京大学, 宇宙線研究所, 特任准教授 (10504574)
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研究分担者 |
田阪 茂樹 東京大学, 宇宙線研究所, 協力研究員 (60155059)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / 低バックグラウンド / 液体キセノン / ラドン |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙暗黒物質直接探索実験の検出器内部に放射性バックグラウンドとして存在するラドン放射能0.1μBq/kg以下に落とす目標を達成するために、キセノン中ラドン吸着の開発研究及び検出器感度向上を目的としている。現在運転を行っている液体キセノン832kgを用いたXMASS-Iでは様々な暗黒物質候補を探索し成果をあげてきたが、キセノン中に10μBq/kg程度のラドンが存在しており、40-120keVのエネルギー領域でで一番大きなバックグランドになっている。従って、目標は1/100の除去である。また、次世代の暗黒物質直接探索ではあらゆる探索において主なバックグランドになると考えられる。 暗黒物質の発見のためには今後ラドン源の削減やラドン自身を除去することが最も重要な課題の一つである。 平成28年度には、ラドン濃度を検出するための静電捕集型の検出器セットアップやラドン除去フィルターを冷却するチェンバーを製作した。 また、ラドン除去の効果を見るためにラドン発生装置(セラミック)の製作も行った。これらの準備状況のもとA社の活性炭を数種類を用いてキセノンガス中での除去をテストした。 一番良いものは8gの少量で約-100℃で約90%の除去率が得られ、有力となる材料が見つかった。 なおSPG多孔質ガラスは23%の除去率であった。石英材質の多孔質は現在製作中である。よって、A社の活性炭を中心に実機へ向けての除去装置製作を進める。 低放射のゲルマニウムによる材料の放射線量の測定も行った。SPG多孔質ガラスはウラン中流:47.6 +/- 0.1 Bq/kg、と多い放射能を含む一方、A社活性炭はウラン系列で 11.9 mBq/kg (90%CL)の上限値を得るだけであり、この点からも有力な材料と見なせる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラドン除去のテストチャンバー、ラドン静電捕集検出器、キセノン循環ライン、冷却装置、ラドン発生装置などが滞りなく準備することができた。 また、この装置を用いてA社活性炭をテストすることができ,約90%の除去率も得られており、第一案として実機用製作へ取り掛かれる状態にある。 また、調達およびその放射能測定も同時に進められた。具体的には、ラドンの親核種ウラン、ラジウム、トリウムなどを含め、神岡地下実験室に設置されて高感度Ge検出器で定量評価を行った。SPG多孔質ガラスやA社活性炭の測定も完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方は大きく2つある。 (1) 平成28年度に製作したラドン除去装置を暗黒物質探索検出XMASS-Iガスラインに取り付け、XMASS-I検出器中のラドン濃度を観測する。その際にはガス純化装置であるゲッターやその他ガスラインや循環ポンプからのラドン放出の値を定量的に抑えながら行う。また、ラドン濃度を算出するために、液体キセノンシンチレータであるXMASS-I検出器のデータ解析ソフトを用意する。 この手法にはラドンの娘核であるBi-Poの同時計測が使われる。 (2)ラドン除去フィルター材料の調査 平行して、引き続き材料調査も行う。例えば、活性炭のポアサイズなどのパラメータを変えることで除去率が変化する可能性がある。また、石英多孔質はサンプルが入手でき、テストする準備が整ったのでいち早くテストを行って行きたい。 最終段階ではXMASS-I検出器のラドン濃度を評価し、暗黒物資探索やその他の観測への感度表を行う。
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