研究課題/領域番号 |
16H03973
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 雅樹 東京大学, 宇宙線研究所, 特任准教授 (10504574)
|
研究分担者 |
田阪 茂樹 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (60155059)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 暗黒物質 / 超対称性理論 / 液体キセノン / 低放射能 / ラドン |
研究実績の概要 |
宇宙物質の大半を占めるとされる暗黒物質は重力による観測事実から、その存在は揺るぎない。しかしその正体は不明であり、80年もの長い間続いている大きな謎である。ヒッグス粒子の発見により標準理論で体系化された粒子はすべてそろったが、暗黒物質はどの粒子にも当てはまらない。これは超対称性理論などから予言される未知の粒子の存在を示唆しているのだろうか?今や暗黒物質の謎は宇宙物理だけでなく、素粒子物理学にも密接な関係があり、21世紀物理学にとって最も重要な課題の一つである。 本研究は、宇宙暗黒物質直接探索実験の検出器内部に放射性バックグランドとして存在するラドン放射能減らし、暗黒物質直接探索などの実験において感度を上げることが目的である。それを達成するためにキセノン中ラドン吸着の開発研究を行っている。XMASSは神岡地下実験室に設置された液体キセノン・シンチレーター(832kg)検出器で、極低エネルギー閾値を達成した世界に類を見ない大型検出器である。XMAS実験ではこの特徴を生かし我々の周りにも存在していると考えられるWIMPをはじめ様々な暗黒物質候補の探索を行ってきた。現在の主なバックグランドの一つにキセノン中に10μBq/kg程度のラドンが存在することが判明し、40-120keVで一番大きなバックグランドになっており、次世代の数トンクラスの検出器ではではWIMP探索だけでなく暗黒光子探索、二重電子捕獲稀崩壊探索などあらゆる物理探索において主なバックグランドになる。暗黒物質の発見のためには今後ラドン源の削減やラドン自身を除去することが最も重要な課題の一つである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A社ナノ素材のテストチェンバーでの結果をふまえ、神岡地下実験施設 Lab-C にてXMASS-I検出器実機の純化システムラインに設置を行った。A社ナノ素材は約140gがステンレスハウジングに封入され、高真空のもと約100℃にて数日ベイキングを行った。その後、化学吸着ゲッターの下流純化ラインに設置された。冷媒を用いた冷却システムは-95℃で安定して数ヶ月以上運転を行なっている。純化経路と流量(0.2-2L/min)を変え液体キセノンシンチレータであるXMASS-I検出器を用いてラドンバックグランドの定量評価を行なっている。 また、調達およびその放射能測定も同時に進められた。高純度石英多孔体などの活性炭ではない材料の準備が進められ、テストを行うところである。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) ナノ素材を用いた実機での効果を定量評価し、まとめる。これにはラドン娘核のBi-Po 崩壊同時計測を用いる。 この同時計測 では214Bi β崩壊の後、半減期164μsecで214Poがアルファ崩壊する。解析では現在運転を行なっている暗黒物質探索データが用いられ約600本の光電子増倍管の信号をwaveform digitizer で記録している。 (2)新規素材(石英など)の放射能測定を行う。材具体的には、ラドンの親核種ウラン、ラジウム、トリウムなどを含め、神岡 地下実験室に設置されて高感度Ge検出器で定量評価を行う。また、これらの新規素材のラドン除去率をテストチェンバーでの性能評価を続けて行い除去率の良いものは実機での活量を計画する。
|