本研究は、宇宙暗黒物質直接探索実験の検出器内部に放射性バックグランドとして存在するラドンを減らし、暗黒物質直接探索などの実験において感度を上げることが目的である。それを達成するためにキセノン中ラドン吸着の開発研究を行った。 暗黒物質直接探索実験XMASSでは神岡地下実験室に設置された液体キセノン・シンチレー ター(832kg)検出器を用い、我々の周りにも存在していると考えられる暗黒物質候補であるWIMPをはじめ様々な探索を行ってきた。主なバックグランドの一つに10μBq/kg程度のラドンが存在することが判明しており、次世代の数トンクラスの検出器ではではWIMP探索だけでなく暗黒光子探索、二重電子捕獲稀崩壊探索などあらゆる物理探索において主なバックグランドになる。暗黒物質の発見のためには今後ラドン源の削減やラドン自身を除去することが最も重要な課題の一つである。 本研究では吸着剤としてA社ナノ素材、UV-活性炭繊維、高純度シリカ、高純度チタニアを80L静電型ラドン検出を用いてキセノン中ラドンの除去率の測定を行った。常温での高純度チタニアは優位な除去率が見られなかったものの、その他の材料では低温になるほど除去率が上がり、約-100℃で50-90%除去率を達成することができた。 効果の高かったA社ナノ素材は神岡地下実験施設 Lab-C にてXMASS-I検出器実機の純化システムラインに設置を行った。A社ナノ素材は約 140gがステンレスハウジングに封入され、純化経路と流量を変えXMASS-I検出器を用いてラドンバックグランドの定量評価を行なった。観測中のデータで最も低いラドンバックグラウンドを達成することができたが、(約7μ/kg)予想よりも効果がなく、検出器内のラドン発生源としてあまり疑われなかった冷却器システムが原因である可能性が分かり、将来に向けての指標となった。
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