研究課題
暗黒物質探索のための超微粒子原子核乾板(NIT)での原子核反跳の飛跡認識では、1視野あたり96枚の画像を処理する必要がある。事象の認識および飛跡の角度および長さに相当する長軸、短軸を決定する飛跡画像処理の高速化を行った。画像処理はGPU上で行う処理とCPU上で行う処理の2種類があるが、その両方の最適化を行った。GPUの共有メモリを有効活用し、アクセス時間の短縮やメモリへのアクセス回数を削減した。当初1視野当たりGPU処理部分が1.35秒、CPU部0.48秒の合計で1.83秒かかっていたものがGPU部0.1秒、CPU部で0.15秒の計0.25秒と約1/7まで短縮でき、複数使用でさらなる並列・高速化が可能となった。画像の撮像速度及びステージの移動時間となったが、ステージ振動の画像へ影響が判明したことから、振動の影響を除去するための短パルス光源を開発した。この光源のパルス幅は2マイクロ秒であり、100kHzでは1/5、1kHzでは1/500に振動を低減することができる。また秒速1mmで乾板を駆動しながら撮影しても、飛跡像に影響を与えない。現在のNIT中の背景事象の主要因がNIT製造中の混入物(ダスト事象)や現像処理を行う際に生じる事象である。これらの成分は現在では不明であるが、ダスト事象は製造中に生成される酸化物などが考えられる。この背景事象と主に銀で構成された飛跡事象を区別するために新しく位相差光学系を導入することでシグナル事象との識別を試みた。位相差光学系では位相情報を取得できることから、構成物質や形状の違いが反映されており、ダスト事象を識別する有力な情報となりえる。実際に100keVの炭素イオンと、定着処理のみをしたNIT中に含まれるダスト事象について比較を行った結果、炭素イオン事象が86%の生き残る条件で、位相差光学系ではダスト事象が95%排除できることを確認した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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