研究実績の概要 |
第三世代MTV実験を遂行し、データ解析を進めた。2020年度は既に取得を終えたMTV Run-2016, 2017の物理データ解析と並んで、系統誤差の評価の為の補助測定を行った。MTV実験はMott散乱の左右非対称性を時間反転対称性の信号として用いる原理であるが、原子核の偏極方向がビーム軸方向の成分を持つ場合には標準模型の範囲内でゼロではない、左右非対称散乱を引き起こす、電子の横方向偏極を持つことが知られている。本年度は、このN相関と呼ばれる相関が見られることを解析の検証として用いつつ、時間反転対称性を破るR相関の物理解析を進めた。左右非対称性は検出器の軸周りの角度の関数として三角関数型となるが、これを精密化し、統計処理の信頼性を大きく向上させる事に成功した。データ解析はほぼ完成に近づいており、まもなく結果をまとめる段階に達しつつある。 時間反転対称性の検証、そしてN相関の検証の一方で、研究期間中に重要課題として注目されるようになったローレンツ対称性の検証についても、MTV実験の既存データを解析することで非常に興味深い結果を得ることが出来た。この結果は系統誤差の評価が未完成であるが、全く別の系で検証する方法を考案し、新たにJ-PARCでのミューオンを使った次世代実験へと発展的に繋げることが出来た。本研究終了後は主としてミューオンを使った実験を推進する予定である。
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