研究課題/領域番号 |
16H03990
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
田中 真伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00222117)
|
研究分担者 |
金子 純一 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90333624)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ダイヤモンド検出器 / ピクセル / 集積回路 |
研究実績の概要 |
世界的にも加速器ビームの高強度化・高輝度化がトレンドになっているなか、本研究は、その加速器ビームを利用した実験の要求に充分耐えうる耐環境性能と高速応答を兼ね備えたダイヤモンドピクセル検出装置実用化のための技術基盤を確立し、従来のピクセル検出器の性能を大きく向上させることを目的とする。具体的にはA)良質なダイヤモンド結晶を定常的に製作するため装置改良を行い、世界最高品質のダイヤモンド基板を製作し、耐放射線評価用パッド・ピクセル検出器試作の研究を進める。B)ダイヤモンド検出器の製作後、検出器を開発する際重要となる小型ピクセル電極生成プロセスの評価を検出器の静特性と電荷収集効率の粒子線照射後の特性を明らかにする。この目的のための評価システムを構築し、リアルタイムで放射線耐性測定を行う。C)ピクセル読み出し用半導体プロセスの評価を行い高耐放射線性能を持つ商用プロセスの評価を行う。それぞれに対して今年度は以下のような成果を得た。 A)北海道大学の製造装置の改良を経て100ミクロン厚の良質のダイヤモンド基板開発に成功した。 B)A)で製作したダイヤモンド基板を使用し放射線検出器の製作を行い、検出効率が90%以上の検出器を得た。現在詳細評価中である。また小型電極製作プロセスへ向けたプロセスの評価を行なっている。耐放射線性能にかんしては、10^12陽子/cm^2まで電荷収集効率は全く変化ないことが確認された。 C)微細CMOSプロセスを使用し、ピクセル読み出し集積回路をのデザインが終了した。また微細プロセスを使用したトランジスタを製作し耐放射線評価を行ったが、プロセスにより放射線耐性の挙動が異なることが確認された。海外との研究ネットワークにより情報交換を行なった結果、他のプロセスも合わせて評価することにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請金額に対して70%の採択金額で本研究を遂行し、目的とする結果を出すために研究分担者と議論を重ねた結果、本年度は下記の方針で研究を実施することにした。その結果研究分担者の科研費使用割合が初年度額の75%程度になったが、これは採択金額を勘案し研究成果を最大限に出すための措置である。また本計画を良好に進めるため、北大におけるダイヤモンド基板製造に関しても研究代表者が参加することでそのノウハウの理解、問題点とその解決方法を共有する事で本計画の成功を目指すこととした。 1.ダイヤモンド製造装置の改良 採択金額内で最大の結果を出すため、今年度はダイヤモンド基板製造装置の改良に集中した。よって次年度行う予定だったメタン添加ラインの増設を前倒しし、高品質の基板製造と検出器製作を北大で集中して行う。ただしボロン電極製造のための真空チェンバー製作は本研究で行おうとすると金額が足りなくなるため、代替案として電極製造方法は従来の方法で行い、なるべく高品質電極を製作するために真空蒸着装置の改良で全体の額を押さえることとした。最終的にこのような装置改良によって良質なダイヤモンド基板を開発できた。 2.ダイヤモンド検出器の評価 ダイヤモンド検出器の評価はまず北大で行い、基礎特性を確認した。またレファレンスとしてすでに製作してあるヨーロッパから購入してあったダイヤモンド基板をベースにした検出器も同様に評価し電極構造による違いなどピクセル化へ向けたプロセス評価が進行中である。一方放射線耐性に関しては、10^12中性子/cm^2まで評価した。今後さらに強度を上げて検出効率の変化を観測する予定である。 3.耐放射線読み出し集積回路の開発に関しては、デザインは完了し来年度製作する。トランジスタの耐放射線評価に関しては海外研究者とのネットワークを利用し情報交換を行った結果追加で別のプロセスの評価を行うこととした。
|
今後の研究の推進方策 |
A)良質なダイヤモンド結晶を定常的に製作するため装置改良 この部分はほぼ目的を達成した。来年度検出器化したダイヤモンド基板の詳細特性を測った後は、大面積化、厚膜化に対して装置改良をどう進めるべきかなどの将来への開発につながる研究へ主軸を移す。 B)ダイヤモンド検出器の製作と耐放射線性能評価 ダイヤモンド検出器の開発には成功したため、次のステップとして小型ピクセル電極製作に関するプロセス評価を来年度以降行う。並行して耐放射線評価を継続する。 C)ピクセル読み出し用半導体プロセスの評価とピクセル検出器読み出し集積回路の製作 ピクセル読み出し集積回路デザインは完了したため来年度実際に製作し評価を行う。今年度さらに追加評価するプロセスを使用し製作するトランジスタの耐放射線特性も評価を行い、高耐放射線性能をもつピクセル読み出し集積回路のデザインへ生かす。
|