研究課題/領域番号 |
16H04001
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
武田 淳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60202165)
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研究分担者 |
南 康夫 徳島大学, 大学院理工学研究部, 特任准教授 (60578368)
片山 郁文 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80432532)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シングルショット分光 / フェムト秒 / 相変化材料 / テラヘルツ |
研究実績の概要 |
本研究課題では、応募者が独自に開発した時間・周波数2次元シングルショット分光技術に高強度・広帯域テラヘルツ(THz)波発生・検出系を組み込み、超広帯域シングルショット分光法を構築する。完成した分光技術を駆使して、極限励起・限界駆動下における電子・格子結合や伝導電子・局在電子の非線形光学応答のダイナミクスを明らかにする。 今年度は、シングルショットで起こる事象の過渡応答を一気に高速フレームレートでオシロスコープに取り込める光ファイバーベースの分光技術を開発した。これにより、強誘電体の非線形屈折率変化、相変化材料の高速アモロファス化の励起強度依存性を1秒間に1,000枚のレートで計測することに成功した。また、階段状素子を用いたシングルショット分光により、パルス磁場下のテラヘルツ応答をシングルショット検出した。 更に、位相制御THz走査トンネル顕微鏡(STM)を開発し、ナノスケールでトンネル電子の実空間制御を行った。Gouy位相シフトと呼ばれる幾何学的位相シフトを用いて入射THz電場の位相を0,π/2,πと調整することにより,探針-試料間のトンネル電子の移動方向を任意に調整できることがわかった。探針-試料間の電場増強度はアンテナ効果により~100,000倍にもなり,得られる電場強度は最大で~16 V/nmにも達する.これは,dc電場でトンネル電子を計測する通常のSTMでは到達できない電場強度であり,我々の構築した“位相制御THz-STM”は,電子のみならず様々な物質の物性をナノ空間で超高速制御する新たなプラットフォームになり得るものと期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初研究計画では、初年度は(1)広帯域シングルショット分光技術の開発を行い、(2)カルコゲナイド半導体の相変化ダイナミクスの検出を行う予定であった。予定していた(1)および(2)の計画を着実に実行でき、更には、高磁場下におけるTHz電場波形検出、位相制御THz走査トンネル顕微鏡を開発できた点は当初計画を上回る成果と言える。とくに、3報の学術論文は何れもハイインパクトな雑誌に受理され、そのうち1報がインパクトファクター30を超えるNature Photonics誌に受理された点は十分に自己評価できる。よって、研究の進捗状況は、順調に推移していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を受け、階段状素子を用いたシングルショット分光により、カルコゲナイド半導体の相変化メカニズムをTHz領域で明らかにする。また、位相制御THz走査トンネル顕微鏡を用い、ナノスケールでの高密度相変化を制御する。ファイバーベースのシングルショット分光においては、ブラッグ回折ファイバーを用いた分散補償、メガヘルツの高繰り返しレーザーによる更なる高フレームレート化を行う。
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