研究課題
機能性有機結晶では、(超)伝導性、反強磁性/強誘電性などを与える「π電子物性」研究と、プロトン伝導や反強誘電/強誘電性などを供する「水素系物性」は独立に研究されてきた。本課題では、π電子と水素の両者が協奏した、超伝導、絶縁体ー金属などのスイッチング、そしてその外場応答(電場、圧力)などの新奇物性・機能性などの開拓を目的としている。具体的には、(1)π電子と水素が協奏する有機分子および高品質有機結晶の合成を行い、(2)結晶・電子構造解析により、π電子と水素の静的協奏関係を明らかにし、(3)直流・交流電気抵抗率、電場下非線形伝導、圧力下抵抗率の測定より、π電子と水素の協奏物性として、外場(電場、圧力)によるプロトンスイッチング、水素の量子揺らぎを利用した超伝導の発現を目指している。2018年度は、よりバンド幅の広いSe類縁体結晶であるκ-H3(Cat-EDT-ST)2を作製し、外場応答として静水圧効果を調べた。S体であるκ-H3(Cat-EDT-TTF)2は、常圧で基底状態は量子スピン液体であり、圧力印可で、電荷秩序に伴う絶縁相が誘起されて半導体―絶縁体転移が出現し、圧力印可と共に、相転移温度は上昇することが観測されている。一方、Se体は、2GPa圧力印可で、20K以下で金属化し、さらに低温の2K以下で半導体的挙動に転じ、圧力印可と共に、半導体化の温度は上昇することが観測された。さらに、2019、2020年度は、Se類縁体結晶κ-H3(Cat-EDT-ST)2に対して静水圧性の良い圧力印可を行い、その圧力応答を再度調査した。その結果、0.7GPa下2.8Kで抵抗ドロップが観測され、磁場で抑制されることから超伝導転移であることが明らかとなった。圧力の印可の方法により、機能物性の振る舞いが異なるのはこの系の特徴と考えられ興味深い。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 7件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
Chemistry A European Journal
巻: 27 ページ: 6696~6700
10.1002/chem.202005333
Nature Communications
巻: 12
10.1038/s41467-021-20925-x
Materia Japan
巻: 60 ページ: 165~168
10.2320/materia.60.165
セラミックス
巻: 56 ページ: 2,88-91
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 89 ページ: 051008~051008
10.7566/JPSJ.89.051008
Journal of Materials Chemistry C
巻: 8 ページ: 14939~14947
10.1039/D0TC04280C
ACS Applied Materials & Interfaces
巻: 13 ページ: 989~998
10.1021/acsami.0c16144
Chemical Physics Letters
巻: 741 ページ: 137091(1-4)
10.1016/j.cplett.2020.137091
CrystEngCommun
巻: 21 ページ: 2940-2948
10.1039/c9ce00364a
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology
巻: 17 ページ: 49-55
10.1380/ejssnt.2019.49
RSC Adv.
巻: 9 ページ: 18353-18358
10.1039/c9ra02833a
Molecular Science
巻: 13 ページ: A0103~A0103
10.3175/molsci.13.A0103
https://hmori.issp.u-tokyo.ac.jp/