研究課題
本研究では、多軌道d電子系とその関連物質を対象に、主たる測定手段として核磁気共鳴(NMR)法を用いて、遍歴と局在の狭間に現れる新奇物性の解明を目指した研究を進めた。本年度は、特に、鉄系超伝導体、レニウム酸化物、励起子絶縁体に関して、以下の結果を得た。1.鉄系超伝導体FeSeの高圧下の新奇物性を調べるために、約6GPaまでの高圧NMR実験を行った。その結果、常圧下の正方晶相でSe核のナイトシフトにc面内異方性が存在すること、さらに、この面内異方性は高圧下の正方晶相でも存在することを見出した。この異方性は、キュリーワイス型の温度変化を示すことから、FeSeの正方晶相では強いネマティック揺らぎが存在しており、内部応力などによって、局所的なネマティック秩序が誘起されたと考えられる。2.レニウム酸化物は、強いスピン軌道相互作用を持つ5d電子系を持っており、新奇物性が期待される。そのようなレニウム酸化物の1つとしてSr7Re4O19をとりあげた。帯磁率と電気抵抗の測定結果は、208Kで、金属絶縁体転移を伴い、常磁性状態から非磁性状態に転移することを示しており、この転移は電荷密度波に起因する可能性があることを指摘した。3.励起子絶縁体候補物質Ta2NiSe5は、約3GPaで層間がスライドする構造相転移を起こす。高圧下のNMR実験を行い、Se核のNMRスペクトルの変化からこの構造相転移を観測した。また、核スピン格子緩和率の温度変化を測定した結果、約3GPa以下では励起子絶縁体転移に伴う異常が観測されないが、約3GPa以上の圧力域では、励起子絶縁体転移に伴う異常が観測された。4.励起子絶縁体候補物質1T-TiSe2の単結晶試料を用いたNMR実験を行い、約200K以下で生じる構造変化に伴うNMRスペクトルの分裂と異方性を観測した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Rev. B
巻: 97 ページ: 174507/1-9
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Physica C: Superconductivity and its applications
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http://i-ken.phys.nagoya-u.ac.jp/index_j.html