研究課題
狭帯域紫外レーザーの高度化と測定ノウハウの蓄積によりこれまで不可能であったk-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2およびk-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brの超伝導ギャップの直接観測とある波数におけるバンド分散の直接観測に世界で初めて成功した、擬2次元有機超伝導体の角度分解光電子分光の成功例は過去にないが、従来成功率がほぼゼロであった擬2次元有機導体を対象とする測定が2割程度成功するまでに至った。試料を徐冷する必要がある関係上、試行回数に限界があったが、R1年度は他の電気伝導度の研究等から半導体的な伝導といわれる室温付近に着目し、金属性は高くなくても、室温でフェルミ面を得ることができれば研究の遂行速度が大幅に向上すると見込み、室温での測定をメインに行った。その結果、信号強度はやや落ちるものの室温においてもバンド分散及びフェルミ端を取得することに成功した。これは非常に大きな成功であり、ヘリウム温度までの冷却によって試料が変質可能性がある分子性導体において、室温であらかじめバンド分散を知っておくことができれば、冷却後の測定も非常に効率的かつ確定的に行うことができ、分子性導体の電子状態の研究が大きく進むことになる。5.9 eVのレーザーにおいては行列要素により第1ブルリアンゾーンのバンドは非常に弱いか全く見えず、第2ブルリアンゾーン及びその近傍においてバンド分散が顕著に観測されることが明らかとなった。更に室温において二つのET分子に由来する2本の角度依存するバンド分散及びフェルミ面の取得に世界で初めて成功し、タイトバインディング計算との比較ができるようになった。これは分子性導体の電子状態研究において非常に大きな進歩である。またARPESが正しく行われていることの確認のためBi2212のARPESも合わせて行い、本結果の正当性を確認している。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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