研究実績の概要 |
スピン正20面体は、その特徴的な幾何学的性質に由来するフラストレート系として、巨大磁気熱量効果を始め特異な物性の発現が期待されている。本申請者らはスピン正20面体からなる結晶において初めて強磁性(傾角強磁性)を発見している。そのような背景のもと、本研究では、世界に先駆けて、①結晶中の強磁性スピン正20面体の属性を解明すること、及び、②その制御法を確立することを目的として研究を行った。具体的な研究内容としては、1.スピン正20面体結晶の構造決定、2、スピン正20面体のスピン配列の決定、3.スピン正20面体の磁性制御法の確立、を行うこととした。 1に関しては、Au-Al-(Gd,Tb)系スピン正20面体結晶の単結晶構造解析を行い、構造決定に成功した。その結果、磁性原子は単位胞の原点と体心位置にある正20面体の頂点に存在すること、及び、それ以外の位置には存在していないことが判明した。2に関しては、東北大学の佐藤卓教授との共同研究として、オーストラリアのANSTOにおいてAu-Al-Tb系スピン正20面体結晶の粉末中性子回折実験を行い、磁気ブラッグ回折の取得に成功した。1で得られた結晶構造を初期構造モデルとして磁気構造解析を行い、磁気構造の決定に成功した。3に関しては、数多くの合金系でスピン正20面体結晶を作製し、その基底磁気状態が平均価電子数のみで良く整理されることを見い出し、また、スピングラス、強磁性、反強磁性相の存在域を解明するとともに、磁性制御法を確立した。
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