研究課題
1. ホランダイト構造をとるBaxTi8O16+δの非整合電荷整列と物性 非整合な電荷整列を起こすことが知られているホランダイトBaxTi8O16+δについて、Ba濃度と酸素のオフストイキオメトリーを変化させてTiのd電子数を様々に変化させた単結晶試料を作製し、その物性を調べた。その結果、これまでに知られていた、電荷整列と正方晶-単斜晶の構造相転移が同時に起こるのではなく、高温で構造相転移が起こってから電荷整列が起こる組成があることが分かった。また、電荷整列に伴う電気抵抗の異常はd電子数が0.2付近で最も大きくなることが明らかになった。さらに、ゼーベック係数はd電子数の増加とともに単調に減少することが分かった。2. La5Mo4O16の緩和現象 2次元磁性体であるLa5Mo4O16では、60K以下の低温で、非常に奇妙な緩和現象が磁気抵抗と磁化率で観測されており、面内のフェリ磁性モーメントが面間方向に非整合に配置しているためであると考えられている。この物質において、スピングラスにおいて知られているのと同様のメモリー効果が発現することを見出した。すなわち、温度降下中にある温度T0で一定時間保持してから最低温まで温度を下げて、その後温度を上昇させながら磁化率を測定すると、T0で異常を示すことを見出した。3. BaV10O15の緩和現象 BaV10O15は130K付近で軌道整列と伴うV三量体相転移を起こすが、それより高温の200K以下から130K付近で、3倍周期となる秩序を示すことが明らかになっており、V三量体が稠密に配列した結果、格子の周期と非整合になる秩序であると考えられている。この三量体相と3倍周期相の間で、電気抵抗率と磁化率において緩和現象を起こすことを見出した。さらに、バルク敏感な磁化率とそうでない電気抵抗率で、ほぼ類似した時間依存性を示すことを見出した。
2: おおむね順調に進展している
電子顕微鏡による構造解析や、共鳴x線散乱実験による電子構造の解明が若干遅れ気味であるが、BaV10O15における新たな緩和現象の発見など、当初の予定になかった成果もあり、全体としては順調に進展している。
基本的には当初の予定通りに進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Phys. Rev. B
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10.1103/PhysRevB.95.075151
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