研究課題/領域番号 |
16H04021
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
池田 浩章 立命館大学, 理工学部, 教授 (90311737)
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研究分担者 |
鈴木 通人 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (10596547)
星野 晋太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (90748394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 物性理論 / 第一原理計算 / 重い電子系 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
1. 当初の予定通り,単体セリウムCeやCeB6といった重い電子系の代表物質に対して,乱雑位相近似(RPA)の範囲内でスピン・電荷・軌道の各種相関関数(多極子相関関数)の計算を行った.その結果,例えば,CeB6の場合,LDA+U計算によるバンド構造に基づいた多極子相関関数において,フント結合の符号をマイナスに取ることで,実験で観測される反強的四極子秩序の発達が見られた.これは,電子相関によるバンド構造の再構成と縮退する軌道間の揺らぎが重要であることの現れであると考えられる. 2. また,本プロジェクトの中心課題である,密度汎関数理論と動的平均場理論の融合に関しては,なんとか年度内に計算可能な状態にこぎつけることができた.現在,いくつかの典型例で計算のチェックしつつ,密度汎関数理論に基づいた電荷整合性を考慮した汎用プログラムの開発を進めているところである. 3. 超伝導状態の低エネルギー励起の第一原理的な導出に関しては,BCS超伝導体Zr2Coを対象として,Kramer-Pesch近似の範囲で,そのギャップ構造の解析を行っている. 4. その他,群論的な考察により,多軌道系超伝導体においては,これまで考えられてきた以上に,多彩なギャップ構造が取り得て,縮退軌道をもつ電子系では,異方的s波超伝導が出現しやすいことが分かった.また,UPd2Al3やUCoGeのようなノンシンモルフィックな磁気空間群におけるギャップ構造ではラインノードが不可避であり,特に,UPd2Al3のようなケースでは,通常のフルギャップのs波超伝導が群論的には禁止されるということが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,CeやCeB6の多極子相関関数をRPAの範囲内で計算し終えることができた.また,研究の核となる密度汎関数理論と動的平均場近似の融合には少し手間取ったが,初年度中に完成することができたため,今後は,相関関数の計算も融合し,重い電子系に見られる多彩な相転移を第一原理計算に基づいて研究する.
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今後の研究の推進方策 |
密度汎関数理論と動的平均場理論を融合したコードは概ね開発できたので,今後は,この計算に基づいて,フェルミ面や磁気異方性,さらには,多極子相関関数を具体的に計算していく.単体CeやCeB6,CeRh2Si2といった重い電子系の代表物質,さらには,ウラン系化合物に対して,多極子揺らぎを第一原理的に計算する. また,群論的な考察から明らかとなった多軌道超伝導の多様なギャップ構造を明らかにするため,電子格子相互作用の軌道・波数依存性を第一原理的に評価し,電子格子相互作用によるBCS超伝導でも異方的超伝導が出現する可能性について半定量的に調べる. 超伝導状態の低エネルギー励起の第一原理的な導出に関しては,Zr2Coの解析が終わり次第,重い電子系のフェルミ面に即してElinberger方程式を評価する方法を具体的に実行する.
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