研究課題/領域番号 |
16H04037
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
堂寺 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30217616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソフトマター / 準結晶 / 凝縮系物理学 / 極小曲面 / 結晶学 |
研究実績の概要 |
(1)黄金比に基づく10回対称Penrose Tiling、白銀比に基づく8回対称Ammann-Beenkerタイリングが1970年代から1980年代にかけて発見された。これらは1980年代に実験的に発見された準結晶の数学的基礎を与えている。研究代表者は、これらのタイリングの系列で3番目の金属比である青銅比に基づく6回対称準結晶タイリングを発見した。数学的発見であるばかりでなく、この青銅比タイリングは2つの長さスケールを持つコアシェル型ポテンシャルを用いて物理的にもシミュレーションで作成することもできる。これらの成果はNature Materials誌に発表され、各種メディアに取り上げられ、また国際結晶学連合で招待講演を行なった。 (2)青銅比タイリングばかりでなく、派生する自己相似タイリングを無限種類構成する方法を発見した。例えば、無限個の3の倍数の金属比タイリングを構成することができる。初期的な成果を日本物理学会年会で発表した。 (3)新奇性に富む新しい複雑結晶構造があることを計算機実験によって示した。(a)黄金比の2乗のハードコア-ソフトショルダー粒子系のつくる2種の黄金樽タイリング構造、(b)正6角形が自己組織化した切頭8面体周期構造、(c)散逸粒子動力学法によるコアシェル型スターポリマーの形成する結晶構造。これらの成果を日本物理学会年会で発表した。 (4)青銅比タイリングの頂点モデルを採用し、強束縛近似を用いて数値計算を行った。その結果、ほとんどの波動関数が臨界状態であることが確認された。また、閉じ込め状態の波動関数も確認された。直交補空間での波動関数の分布をみることで、閉じ込め状態・臨界状態の波動関数とタイリングの局所環境との関係性が明らかになった。成果を日本物理学会年会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画に記載した3本柱は、(a)新奇性に富む新しい準結晶および複雑結晶構造があることを理論的に示すこと、(b)実験との連携を強化し、ソフト準結晶研究の最前線をリードすること、(c)新しい構造から新しい光物性の可能性を提示すること、であった。 (a)については、素晴らしい進展を見せている。とりわけ上に記載した顕著な研究実績(1)は青銅比タイリング発見で、「Bronze-mean hexagonal quasicrystal」というタイトルでNature Materials誌で公表した。2014年のNature誌と相まって招待講演の依頼は多い。時間的制限から重要な研究集会を選び参加していると同時に、国際研究交流を意識的に強化している。29年度後半では、研究実績(2)の驚くべき進展があった。青銅比どころか無限種類の自己相似比をもつ準周期タイリングの構成法を発見した。準結晶理論の業界に激震が走ると思われる成果であるばかり出なく、今後の研究によって結晶学の大きな進展に繋がるテーマと考えている。細かい通常研究の成果も出ており、それらは順調である。 一方、 (b)ついては、青銅比タイリングの実験的発見に向けて紹介論文を書く必要があるだろう。また20面体相のシミュレーション研究については、担当学生の成果はなく、全く国際連携研究が進展していない。この点は課題である。 (c)については、前年述べたように光物性ではないが、同じ固有値問題である電子物性について研究実績(3)を出すことができた。残りの1年で論文にまとめられる見込みである。方向性として正しい研究になったと考えている。 2年度目の論文出版数が少ないが、複数のテーマで成果は出ており最終年度に投稿する予定である。 以上をまとめると、(a)の成果は想像を超えていて突出している。よって「当初の計画以上に進展している。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究の推進方策は以下の通りである。 (1)初年度の成果である青銅比準結晶の成果を皮切りに無限に多くの自己相似タイリングが発見された。これに関する高次元結晶学を発展させる。今までに全くなかった準結晶と結晶を統一する見方を与える。最初に3の倍数の金属比タイリングについて詳しく検討する。これはリブリャナ大学Ziherl博士、大学院生と協力して国際共同研究とする。 (2)初年度に購入した機器で収集している3次元構造のデータに注目すべき成果がある。強力な論文を作成するために(a) Frenkel-Ladd法による自由エネルギー計算で理論的に補強する。(b) 近畿大学荒井博士の協力でコアシェル型スターポリマーでも同じ結晶構造が作成されたので補強する。 (c)格子高分子モデルでも学部生に探求させる。以上の結果をまとめ、研究計画の新しい目玉として成長させる。 (3)以下の課題について研究する。(a)2年度目、青銅比準結晶タイリングの電子状態の計算を行った。直交補空間での波動関数の分布をみることで、波動関数の自己相似性について新しい解析が可能になった。それについてまとめる。(b)黄金比の2乗のハードコア-ソフトショルダー粒子系のつくる2種の黄金樽タイリング構造について圧力一定のシミュレーションを行なった。本年度はデータを蓄積し、論文にまとめる。(c)2年度目からナノロボットの原理の構築と計算を試みた。最初の結果として正6角形が自己組織化した切頭8面体周期構造の成果を大学院生が出したのでまとめる。順調に進めば新しいモデルの構築も試みる。(d)エルランゲン大学エンゲル博士らが発表した3次元準結晶の分子シミュレーションについて、エンゲル博士、CNRSドボアシュ博士の協力を得て、大学院生とともに2年度目に購入した計算機を用いて追計算を行い、3年を通じての懸案であるフェイゾン解析を遂行する。
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