研究実績の概要 |
(1)黄金比に基づく10回対称Penrose Tiling、白銀比に基づく8回対称Ammann-Beenkerタイリングが1970年代から1980年代にかけて発見された。これらは1980年代に実験的に発見された準結晶の数学的基礎を与えている。研究代表者は、別宮、Ziherlらとこれらのタイリングの系列で3番目の金属比である青銅比に基づく6回対称準結晶タイリングをシミュレーションで発見、理論的にも整備して、2017年Nature Materials誌に発表している。これらは自己相似タイリング理論の40年ぶりの革新と言える。 しかし、これは理論の端緒に過ぎなかった。2018年度はこの成果を土台として、中蔵の協力を得て、2種類の3倍数(6,9,12,...)の金属比をもつ自己相似タイリング列を発見した。同時に金属比以外にも無限種類の自己相似タイリングの構成法も発見した。これまで数種しかなかった自己相似タイリングを無限に広げることになった。これこそが前年度の研究の新の意味であって、さらなる革新的研究となっている。これらの新規準結晶について、松澤の協力を得て、6次元の高次元結晶学を展開し、技術的にも整備した。 上記の3の倍数の金属比について無限の極限をとることによって、周期的結晶である三角格子が得られた。ここから準周期結晶の近似列の先に周期的結晶がある「近似準結晶」という概念を提唱した。この「近似準結晶」の考え方は、これまで知られていた「近似結晶」と相補的概念となっている。以上のように周期および準周期結晶学について革新的研究を展開できた。 (2)金沢大学生越らが発見した電荷を帯びた5角および6角のピラーアレーン分子が同種分子(形)を選択して積層する現象(セルフソーティング)について、計算研究の立場で解析を担当した。その成果がCommunications Chemistryに掲載された。
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