研究課題
平成30年度は、微惑星を模擬した多孔質石膏球及び乾燥粘土球の衝突破片に関して、その速度-質量分布をフラッシュX線を利用して研究した。室内実験により、重力支配域の衝突破壊強度を求めるためには、衝突破片の質量とその速度の関係を明らかにする必要がある。そこで昨年度に引き続き、3台のフラッシュX線源とイメージングプレートにより、衝突破壊時の標的内部の透過像を撮影する手法を利用した。この手法では、標的内部に設置した直径3mmの鉄球マーカーの位置の時間変化を調べることで、標的内部の破片速度を計測している。今年度は、直径7mmのポリカーボネート弾丸を用いて、直径6cmの空隙率50%の多孔質石膏球と空隙率48%乾燥粘土球に対して衝突速度2km/sから5km/sで衝突破壊実験を行った。なお、多孔質石膏球の引っ張り強度は1MPa~2MPaであり、乾燥粘土球より、かなり大きな引っ張り強度を持つ。実験の結果、それぞれの標的試料の半分の質量が持つ上限の速度を決めることができた。この速度を中間速度(V*)と定義し、このV*のエネルギー密度依存性や引っ張り強度との関係を求めた。その結果、V*は昨年度行った凍結粘土球の結果と同じで、エネルギー密度に比例して大きくなることがわかった。また、同等の空隙率を持つ試料では、試料の引っ張り強度には依存しないことがわかった。一方、空隙率50%の多孔質石膏球のV*と空隙率48%の乾燥粘土球のV*は、凍結粘土球のV*よりかなり小さくなり、空隙がV*に大きな影響を及ぼすことをはっきりと確認できた。衝突エネルギーと中間速度の関係から、天体半径と重力支配域における衝突破壊強度Q_D*の関係が導ける。この結果を凍結粘土球と比較したところ、同じ天体半径でもQ_D*の値が多孔質石膏球と乾燥粘土では3倍程度大きくなることがわかった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Icarus
巻: 309 ページ: 13~24
https://doi.org/10.1016/j.icarus.2018.02.027
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