研究課題/領域番号 |
16H04042
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
並木 敦子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (20450653)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粘弾性 / マグマ / 気泡 / 結晶 / 火山噴火 |
研究実績の概要 |
マグマのレオロジーは噴火様式を左右する重要なパラメータであるが、気泡や結晶が入る事により、数桁変わり得る。本研究では研究代表者が所有するレオメータ(アントンパール社製MCR102)に高温炉(CTD1000)をとりつける事で、熔融マグマのレオロジー測定を行う事を目指している。3年計画の1、2年目であるH28-H29年度はこの高温炉を導入し、測定を可能にする為の作業に主にあてられた。当初H28年9月に高温炉の設置が完了し、測定を始める予定であったが、納品の遅れや高温炉の初期不良などにより、炉の設置が完了したのはH29年2月となった。その後、測定に使用する治具や測定中の温度制御の不具合が判明し、これらの対策に更に半年程を費やす事となった。温度制御が可能になった後、測定値の補正に必要な治具の弾性的性質の測定、及び粘性率がわかっているガラスによるキャリブレーションを行った。一方、高温炉の設置と並行して、測定を行うサンプルの収集、及びサンプルの成形方法の開発も行った。レオロジー測定ではサンプルを円盤状にする必要がある。よって、ダイアモンドコアビットを用いてサンプルを円柱状にくり抜き、これを円盤状にスライスする事とし、この為のホルダーを開発した。これまでのところ、予備的な測定を行い、発泡度の高いシリシックな熔岩サンプルは800℃程度の高温であってもほぼ粘性変形せずに固体的に破壊する領域がある事がわかった。今後はより広いパラメータ領域で、破壊と粘性変形の境界を明らかにする事を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初H28年9月に高温炉の設置が完了し、測定を始める予定であった。しかし、メーカーによる発注ミスや高温炉の初期不良、不良個所の特定に時間を要した事により、炉の設置が完了したのはH29年2月となった。設置後も、測定に使用する治具や測定中の温度制御の不具合が判明し、これらの対策に更に半年程を費やす事となった。よってほぼ1年の遅れが出る事となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は発泡度の良いサンプルの破砕条件を明らかにする事を目指す。具体的には十勝産の黒曜石を用い、これを加熱する事で発泡したサンプルを準備する。加熱時間と加熱温度を変える事で発泡度をコントロールしたサンプルを形成する。このサンプルの動的粘弾性測定を行い、発泡度と気泡のサイズ分布が粘弾性の固体成分と液体成分の比をどの様に変えるか、明らかにする。これまでの予備的実験によれば、このサンプルは高温下でせん断変形を加える事で固体的に破壊される。破壊される時のサンプルの発泡度、気泡のサイズ分布、サンプルに掛かる垂直応力、せん断応力、また、サンプルの歪量と歪速度を記載する事で、高温下でのマグマの破壊条件を明らかにする。動的粘弾性測定の結果を踏まえ、実際に固体的振る舞いが破壊とどのように関係しているのかも明らかにする。期間の後半までには測定を終え、論文の執筆を始める事を目指す。
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