研究課題/領域番号 |
16H04044
|
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
安部 正真 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (00270439)
|
研究分担者 |
矢田 達 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究開発員 (00294877)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 宇宙風化 / 小惑星 / リモートセンシング / 太陽風 / 反射スペクトル / 水 |
研究実績の概要 |
新規に整備を行ったイオン照射装置を用いて、小惑星模擬表層物質としての含水ケイ酸塩鉱物と無水ケイ酸塩鉱物に対して、太陽風を模擬した水素イオンの照射実験を行った。照射前後の反射スペクトル測定を行ったところ、水素イオンの照射によって、H2OおよびOHに関連する吸収バンドに強度変化が見られた。このことから、水素イオンがケイ酸塩鉱物と反応して水を生成することを示唆する知見が得られた。大気のない小惑星や月表層のケイ酸塩鉱物に水素イオンが貫入し、結晶構造を壊し、活性化した酸素に水素イオンが結合することにより、SiOHやH2Oが形成していると考えられる。 今年度は照射する試料を変えて、イオン照射量とスペクトル変化の関係に関する知見を獲得した。微隕石衝突を模擬した宇宙風化実験の結果とも整合する結果が得られている。 また、ケイ酸塩鉱物への水素イオンの貫入で形成されるOHやH2Oの温度安定性についての知見を得るために、照射装置のサンプルホルダーに加熱機構を付加する改修を行った。この結果は実際に月表面で観察された水に関する吸収バンドの生成メカニズムを考察するのに役立つと考えられる。 また、微隕石衝突を模擬した実験による反射スペクトル変化の測定は主に、可視波長域で行われているため、その結果と比較できるように、本研究で用いているFTIRの観測波長域を可視域まで拡張した。可視域には0.7ミクロンの水質変成に関係する吸収バンドがあり、宇宙風化がこの吸収バンドにどのような変化を及ぼすかについての考察にも役立つと考えられる。 これらの改修後の照射・加熱実験および反射スペクトル測定の実施と結果の考察については、来年度も引き続き行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に整備したイオン照射装置については、安定的に連続照射できるようになり、照射量に対する、反射スペクトルの変化や、鉱物表層や結晶構造の変化を定量的に調べることができるようになった。また、測定波長域を可視域に拡張する改良や、試料の加熱機構の追加などを行い、微小隕石衝突を模擬した宇宙風化実験との比較や、実際の天体で観測される反射スペクトルデータとの比較が行えるようになったため、様々な考察が行える環境を構築できているため。
|
今後の研究の推進方策 |
提案時の研究計画に従って研究を進める。研究協力者も確保できる見通しが立ったので、実験データ取得と研究成果の創出活動を加速できる予定である。
|