研究課題
本年度までに開発した照射装置および反射スペクトル測定装置を用いて、小惑星模擬表彰物質への水素イオンの照射実験を実施した。具体的には輝石の表面に1keVの水素イオンを10の16乗から18乗イオン/cm2の照射を行い、照射された輝石試料を集束イオンビーム加工装置を用いて切断面を切り出し、鉱物内部のイオン照射による変化を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果10の16乗イオン/cm2では見られなかった変化が10の17乗イオン/cm2では観察された。この変化はアモルファス層が生成されたり、ブリスターと呼ばれる表層の盛り上がりが形成されたりするものであり、反射スペクトルの変化との関連性が示唆される。昨年度までに別途実施した実験結果と合わせるとで、照射した水素イオンが鉱物内部に貫入してスペクトル変化を起こす原因となっていることが明らかになった。観察された貫入深さは50nm程度で、はやぶさが持ち帰った小惑星イトカワ微粒子表面にも同様なイオン照射の影響と思われる宇宙風化層が存在していることから、太陽風によるイオン照射が小惑星表層における宇宙風化の原因の一つであることが実証された。現在進行中のはやぶさ2による小惑星リュウグウの探査では、搭載されている観測機器で小惑星表層に宇宙風化が観察されている。また反射スペクトル観測の結果からは、含水鉱物の存在を示す吸収バンドの特徴が検出されており、その生成要因について議論が開始されたところであり、本研究成果の貢献が期待されている。本研究においては、太陽風を模擬した水素イオン照射によって、含水鉱物の生成を示す反射スペクトル変化を得ることに成功しているが、その生成量について、現時点では定量的な議論を行える段階には至っていない。引き続き本研究で導入した水分計などを用いて定量的な検討を進めていく予定である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Science
巻: - ページ: -
10.1126/science.aav7432
10.1126/science.aav8032
10.1126/science.aaw0422
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 70 ページ: -
https://doi.org/10.1093/pasj/psy119