研究課題/領域番号 |
16H04049
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
篠田 太郎 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (50335022)
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研究分担者 |
高橋 暢宏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60425767)
大東 忠保 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (80464155)
坪木 和久 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (90222140)
久保 守 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (90249772)
皆巳 幸也 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (90290080)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Ka帯偏波雲レーダ / 固体降水粒子 / 偏波パラメータ / 粒子判別 / 雲微物理過程 |
研究実績の概要 |
これまでにKa帯レーダを用いて実施した観測結果から、融解層(0℃高度)よりも上層(高度+1~2km)に偏波間位相差変化率KDPが大きな正の値(1~3 deg./km以上)をとる領域が観測されることを確認した。粒子ゾンデを用いた直接観測の結果と偏波パラメータの比較を行ったところ、KDP極大領域は板状もしくは柱状の氷晶粒子が数多く存在する領域に対応していることを確認した。粒子判別の観点から、このようなKDP極大領域は雪片の形成に大きく寄与することが示唆されており、北陸観測ではKDP極大領域の直接観測が行えないことから、長時間にわたる直接観測の可能性を検討した。 このため、2017年度予算を最終(2018)年度に繰り越す形で、Ka帯偏波レーダを用いた北海道観測を追加して計画した。2018年11月にKa帯偏波レーダを北海道江別市の酪農学園大学の敷地内に移設し、12月6日から年度末まで連続観測を実施した。同時に、レーダから14km西方に位置する北海道大学低温科学研究所内に設置された地上降雪粒子観測機器のデータを提供していただき、偏波レーダで取得される偏波パラメータと粒子の特徴(形状・粒径・数濃度)の関連について比較を行っている。また、1月10日~11日にはレーダ観測に同期して北大低温研において粒子の接写観測を行い、数多くの大粒径の雪片や柱状の氷晶粒子を確認した。KDP極大層の出現頻度や出現領域(高度分布)、KDPの値と観測された粒子の形状や数の関係について、本研究課題終了後にも解析を継続して実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度からの予算の繰り越しを使用して、2018年度冬季に北海道江別市の酪農学園大学にKa帯を移設し、連続観測を実施した。2017年度中に移設の実現性を調整した後に、繰り越し申請を行い、2018年度の夏から秋にかけて具体的な計画の立案を行った。そして、積雪前の11月中旬にレーダを移設した。点検調整を経て12月6日から観測を開始し、その後年度末まで連続観測を実施した。この間、北海道大学低温科学研究所内に設置された地上降雪粒子観測機器のデータと同期して観測を行った。また、レーダ観測期間中の降雪イベント(1月10日~11日)では粒子の接写観測も実施し、実際に降ってくる氷晶粒子と雪片の確認も行った。これらの観測は繰り越し時点で予定していた通りである。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度と2017年度の冬季に北陸地方(石川県立大学)で取得したレーダデータと地上降雪粒子の観測機器により取得されたデータの解析を進め、Ka帯偏波レーダにより取得される偏波パラメータによる降雪粒子の判別が困難であることを確認した。これは、霰などの大粒径の粒子に対するミー散乱の効果と、粒径の小さな氷晶に対する高感度の観測結果が相殺して、偏波パラメータ間での霰、雪片、氷晶などの相違が出現し難いという特性によるものであり、本研究課題により得られた成果である。 その一方で、Ka帯レーダを用いた梅雨期の観測結果から、地上で中程度の雨が観測されている際に、0℃高度よりも上層1~2kmの範囲に偏波間位相差変化率KDPの値が大きな正の値(1.0 deg./km以上)を示す領域が時々観測されることを確認した。粒子ゾンデとの同期観測との比較から、板状や柱状の氷晶粒子が多数存在する領域がKDP極大領域に対応することを明らかにすることができた。このようなKDP極大領域は、北陸地方で観測された雪雲でも時々観測されていたために、KDP極大領域が地上付近で観測できるような条件である北海道において、2018年度の冬季観測を実施した。非常に興味深いことに、KDP極大領域に対応する降水域での氷晶数濃度が大きな領域や、その下層における雪片の形成は、雲解像数値モデルでは捉えられておらず、氷晶粒子の数濃度の計算スキームや雪片の形成過程に顕著な問題点があることを示唆していると考えられる。 本研究課題(科研費)は2018年度で終了するが、今後、北海道での観測結果の解析を行い、KDP極大領域の特徴を調べるとともに、数値モデルにおいて氷晶数濃度の極大領域と雪片への変換が表現できていない理由を詳細に検討していきたい。
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