研究課題/領域番号 |
16H04052
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣岡 俊彦 九州大学, 理学研究院, 教授 (90253393)
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研究分担者 |
河谷 芳雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 主任研究員 (00392960)
渡辺 真吾 国立研究開発法人海洋研究開発機構, シームレス環境予測研究分野, 分野長 (50371745)
江口 菜穂 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (50378907)
岩尾 航希 熊本高等専門学校, 共通教育科(八代キャンパス), 准教授 (80396944)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気象学 / 中間圏 / 下部熱圏 / 大気大循環 / 大気波動 |
研究実績の概要 |
衛星データと再解析データを用い、引き続き、成層圏・中間圏・下部熱圏領域について、北半球冬季の循環場とプラネタリー波の関係について詳細に解析した。プラネタリー波を停滞性成分と移動性成分に分離し、それぞれの成分の循環場に対する寄与について調べたところ、停滞性成分が大きな西風減速を示す年は、東西風の構造の不安定性に起因すると考えられる移動性成分が大きな西風加速を示すというように、両成分の年々変動は逆相関を示し、特に大規模成層圏突然昇温が生起していない年にその傾向が顕著であることを明らかにした。また、昨年度調べた、5種類の再解析データを用いた東西風場と温度場の類似点・相違点については、結果を国際比較プロジェクト(S-RIP)の報告書にまとめた。さらに、2018年2月に生起した極渦分裂型の成層圏大規模突然昇温現象について、下部熱圏高度までの領域について詳細な解析を行った。その結果、過去の事例と比べると、上部成層圏への波束の伝播が相対的に弱く、温度場や東西風場の変動が緩やかであることがわかり、解析結果を論文にまとめ公表した。これに加え、2019年1月にも突然昇温現象が生じたので解析を進め、この事例は、極渦移動型から極渦分裂型へと移行する混合型であることがわかった。
一方大気微量成分であるオゾンの変動については、南極域のオゾンホールの年々変動を対象に、その力学場との関係を解析した。その結果、2012年と2017年には、プラネタリー波の活動度が他の年に比べて高ため、オゾンホール規模が弱小化していることが明らかとなった。さらに成層圏における水蒸気変動に関しても力学場との関係を解析し、冬半球成層圏のプラネタリー波活動に伴う、ブリューワー・ドブソン循環の変動との相関が高いことを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衛星データと再解析データを用いた詳細な解析で、2018年2月に生起した極渦分裂型の成層圏大規模突然昇温現象について、過去の事例との比較を通し、その特徴を明らかにすることができた。また、プラネタリー波の停滞性成分と移動性成分の相互関係を明らかにすることができた。さらに大気微量成分と力学場との関係も研究が進展し、これらの成果を、学術論文や国内外の研究集会で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度となるので、これまでに得られた成果に基づき、以下の項目を中心に研究を進める。 ・2018年2月と2019年1月の成層圏突然昇温生起に伴う力学場の変動の解析を、下部熱圏領域まで広く行い、過去の事例と比較する。 ・中間圏冬季に見られる移動性の大規模波動について、線形不安定モードの固有値計算を行い、観測結果との比較を行う。 ・大気大循環モデルを用いた数値シミュレーションを実施し、観測結果と比較する。 ・研究課題最終年度のとりまとめを行う。
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