研究課題
国際宇宙ステーションからの直下視観測ミッション(GLIMS)で得られた光学観測データ,数値モデル計算,地上雷観測データ,大気電場観測データを駆使することで,(1)雷放電が生起する放射電界と準静電界を統一的に解く数値モデルによってスプライトの水平空間分布を再現し生成機構を明らかにすること,(2)雲内放電と対地雷との比率及びその緯度依存性を明らかにし,全球電流回路の数値モデル計算結果と実観測データとを比較することで,大気放電が全球電流回路で担う役割を定量評価することを目的とする。平成28年度は大きく分けて2つの研究課題に取り組んだ。第一に,スプライトを発生させた雷放電の上空における放射電界と電子密度の時空間変化を数値モデル計算するために,GLIMSの可視カメラで得られた画像データから雷放電の放電進展路をモデル化した。さらに,そのモデル化した放電進展路を時間領域差分法(FDTD)に組み込むためのデータ整備を行い,実際にFDTD計算を進めて放射電界と電子密度の時空間変化に関する初期結果を得つつある。第二に,GLIMSのフォトメタデータと可視カメラデータを無作為に約700例抽出し,観測波長の違いによる測光強度比の違いを明らかにした。さらに地上雷観測網(NLDN, WWLLN, JLDN)データとの比較を行うことで,雲内放電と対地雷とを判別する手法の開発に目処をつけた。これらの研究成果および関連する研究成果をまとめた査読論文は9本出版され(一部は印刷中),修士論文も1本,国内・国際学会における講演も22件行うなど,積極的な成果公開に努めている。平成29年度は,FDTD計算結果を基に,準静電場モデルによってスプライトを再現する数値計算を開始する。さらに,雲内放電と対地雷との判別手法をGLIMSが検出した全雷放電事例に対し適用し,雲内放電と対地雷との比率およびその緯度依存性を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に実施する予定であった研究課題,すなわち,(1)スプライトを生起した雷放電発光の可視カメラ観測画像データから放電進展路をモデル化し,FDTD法による計算を開始すること,(2)GLIMSと地上の雷観測データとを比較し雲内放電と対地雷とを判別する手法開発に目処をつけること,をほぼ達成できたからである。
当初予定していた平成29年度の研究計画に大きな変更は無い。具体的に実施する研究課題は,(1)FDTD計算結果を組み込んだ準静電場モデルを開発し,この統一的数値モデルによるスプライト発生の計算を開始すること,(2)雲内放電と対地雷との判別手法を確立し,GLIMSが検出した全雷事例に適用して,雲内放電と対地雷との比率およびその緯度依存性を明らかにする,という2つの内容である。ただ,これまで本課題に参画していた共同研究者が民間企業に就職し,今後は研究協力者として加わることとなった。これに起因するスケジュールの遅延等が発生しないよう,より頻繁かつ入念な研究打合せを行うなどの対策を取る予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Terrestrial, Atmospheric and Oceanic Sciences
巻: 28 ページ: 609~624
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