研究実績の概要 |
本研究の目的は, 水星や月面磁気異常上空で形成される「小スケール磁気圏」の昼間側境界層における太陽風の3次元運動論的応答とそれに起因する様々な波動粒子相互作用との関係を包括的に解明することである. 波動粒子相互作用の解析を行う上で、対象領域でのプラズマ粒子の速度分布関数は非常に重要である。本年度は, 全粒子モデル計算機実験で得られた定常場を基に, Liouville定理に基づくBacktracking法のテスト粒子計算により,観測点の速度位相空間上の各点から多数の粒子を逆追跡して観測点での粒子速度分布関数を求める新しいテスト粒子計算手法の開発を行った。その後、月面上の局所磁気異常領域と太陽風プラズマとの相互作用によって形成される小型磁気圏に関する3次元プラズマ粒子シミュレーションを実施し、それによって得られる磁気異常上空での電磁場データを用いて、磁気圏昼間側境界層におけるプラズマ速度分布関数を取得することができた。特に、マグネトポーズと太陽風中の2つの領域におけるプラズマ速度分布関数を取得し比較することにより、赤道面のマグネトポーズにおける電子の強い流れやイオンの太陽方向への反射を速度分布関数の観点から定量的に把握することができた。地球磁気圏の場合と違い、磁気圏形成において太陽風のイオンや電子のジャイロ半径や慣性長が無視できない。このため、特にマグネトポーズにおける速度分布関数では、太陽風プラズマのサイクロトロン運動などの運動論的効果の影響が大きく出ることにより非熱的成分が生成されることがわかった。
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