研究実績の概要 |
地球に類似した系外惑星の発見に向けて大型計画が複数進行しており, 地球型大気の観測検討が急速に進みつつある. これは超高層物理学の新たなる最重要課題であるにもかかわらず, 天文学分野を中心に観測的研究が進められてきた背景から, 地球大気の主要な物理量である紫外線輻射量や酸素原子量については, 観測の見込みすら立っていない. この状況を打破するために, 本研究では地球惑星大気の観測で蓄積された技術を継承し,太陽系外の地球型惑星の観測手法の検討と技術開発を進めてきた。 地球では、金星や火星に比べて、大気中に酸素が豊富に存在し、高層大気が大きく広がっている。これは、光合成植物によって酸素が常に大気へ供給されているためである。さらに、高層大気の広がりは、大気の温度と関係する。金星や火星では、CO2の存在度が高く、その赤外放射冷却によって高層大気はそれほど高温化しない。一方、地球では、CO2が少ないため高層大気は高温化し、大きく広がっている。こうした違いは、M型星まわりのハビタブルゾーンのように、強紫外線環境で特に顕著である。大気中のCO2量に関する地球と金星・火星の違いは、海と大陸の有無と関係することが知られている。地球のような海と大陸を持つ惑星では、大陸風化によって大気中のCO2は除去され、海底やマントルに固定される。つまり、酸素大気の広がりは、海と大陸、つまりプレートテクトニクスの存在を示唆するものであると言える。この現象を捉えるために、紫外線分光観測の検討を進めてきた。当該年度中にはロシアの1.7m紫外線望遠鏡開発チームから装置提供の依頼があり、日本から分光器を提供することを検討している。その検出器にファネル型MCPを使うことで効率が1.5倍程度まで向上することを確認した。
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