研究課題
アメリカ合衆国ネバダ州Virgin Valley産のオパール試料と、北海道長万部町茶屋川産のめのう試料について、粉砕試料と粉砕後水簸によって選別した粒径5μm以下の粉末試料を作成し、微細構造観察、粉末X線回折分析、熱重量分析、および顕微赤外分光分析を行い、両者の微細構造と鉱物学的特徴について検討を行った。1)オパール試料は、主として珪藻化石から成る珪質堆積物起源で、大部分が非晶質である。粉末X線回折分析の結果、オパールCTと非晶質物質から成ることが明らかとなった。熱重量分析と顕微赤外分光分析から、オパール試料には約3.2 wt%の分子水と約1.1 wt%の構造水、合計4.3 wt%の水分が含まれることが明らかとなった。オパールの粉砕・粉末試料には、さらに粒子表面に1~2 wt%の水分が吸着することも明らかとなった。2)めのう試料は、カルセドニー特有の針状組織を示す。粉末X線回折分析の結果、100%石英から成ることが確認された。熱重量分析と顕微赤外分光分析から、めのう試料には分子水約0.3 wt%、構造水約1 wt%、合計約1.3 wt%の水分が含まれることが明らかとなった。めのう試料を粉砕しただけでは粒子表面への水分の吸着は無視できる程度であるが、粒径5μm以下の粉末試料には粒子表面に約0.3 wt%の水分が吸着することが明らかとなった。3)オパール試料とめのう試料を比較すると、構造水含有量には大きな差は認められないが、分子水含有量は前者が10倍程度多い。オパール試料の分子水含有量がめのう試料より多いのは、オパールCTの鉱物学的性質も反映していると考えられるが、オパール試料が大部分非晶質物質から成るのに対し、めのう試料には非晶質物質は含まれておらず、水分を吸着しやすい非晶質物質を多く含むことも反映していると考えられる。
3: やや遅れている
実験に使用予定であったガス圧式高温高圧三軸試験機が故障し、その修理に時間を要したため、今年度は実験を行うことができなかった。そのため、今年度は次年度以後に実験に使用予定のオパールおよびめのうの試料について、微細構造観察、粉末X線回折分析、熱重量分析、および顕微赤外分光分析を行い、微細構造と鉱物学的特徴(特に含水量)を明らかにするにとどまった。
ガス圧式高温高圧三軸試験機の修理が今年度末にようやく完了したので、次年度以後は精力的に実験を行い、研究の遅れを取り返す予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件)
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