研究課題
含水石英(オパール)ガウジ試料について、低温熱水条件下(室温~200℃、封圧150MPa、間隙水圧50MPa)で変位速度を0.1155, 1.155, 11.55 μm/sの間でステップ状に変化させながら三軸摩擦実験を行い、定常摩擦強度とその変位速度依存性(正ならば安定で非地震性、負ならば不安定で地震性となり得る)に関して、以下の結果を得た。1)定常摩擦強度は温度上昇に伴い増大する傾向が認められる。温度上昇に伴いすべり硬化の挙動を示すようになることも、この傾向と調和的である。微細構造観察の結果、高温ほどガウジ層がより密になっていることから、溶解-析出クリープによる粒子間の癒着が進行し、定常摩擦強度が大きくなったと考えられる。2)50℃以上の温度では、定常摩擦強度の変位速度依存性に温度上昇または変位速度低下に伴う減少傾向が認められる。正(速度強化)から負(速度弱化)に転じる温度は変位速度0.1155 μm/sでは50℃以下、1.155 μm/sでは50℃と100℃の間、11.55 μm/sでは100℃以上である。このような変化も、温度と変位速度により活動度が異なる溶解-析出クリープに起因していると考えられる。一方、室温では定常摩擦強度の変位速度依存性に変位速度による変化が認められないので、溶解-析出クリープは活動的でなかったと考えられる。3)室温では変形機構はカタクレーシスのみが活動的であったと考えられるが、50℃以上ではカタクレーシスに加えて溶解-析出クリープが活動的になり、温度上昇に伴って溶解-析出クリープの活動度が大きくなるに従い、粒子間の癒着により定常摩擦強度が増加し、その変位速度依存性が減少して、速度強化から速度弱化への遷移が起こったと考えられる。従って、溶解-析出クリープの活動は断層運動を不安定化し、非地震性から地震性への断層運動の遷移を促すと想定される。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は試験機の不調で実験がほとんどできなかったが、今年度は実験が順調に進み、溶解-析出クリープの活動による断層の力学的挙動の変化を明らかにすることができ、昨年度の研究の遅れを挽回できたと考えている。
来年度はまず、水ではなくアルゴンを間隙圧媒体として昨年度と同じ実験条件でオパールガウジの摩擦実験を行い、温度による力学的挙動(定常摩擦強度とその変位速度依存性など)の変化を調べ、昨年度の間隙水圧下の実験結果との比較を行う。また、実験後の試料について光学・電子顕微鏡による微細構造観察を行い、昨年度の間隙水圧下の実験後試料との比較を行う。アルゴン間隙圧下では溶解-析出クリープは活動的でないため、以上の実験結果と観察結果に基づいて、断層の力学的挙動に対する溶解-析出クリープの影響を評価する。再来年度以後に、封圧150 MPa、間隙水圧50 MPa、温度300~800℃の条件下でオパールガウジの摩擦実験を行い、力学データと微細構造観察に基づいて、溶解-析出クリープから転位クリープへの変形機構遷移に伴う断層の力学的挙動の変化を明らかにする。
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