研究課題/領域番号 |
16H04063
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安東 淳一 広島大学, 理学研究科, 教授 (50291480)
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研究分担者 |
富岡 尚敬 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任技術研究員 (30335418)
廣瀬 丈洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (40470124)
鍵 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (80403864)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鏡肌 / 断層運動 / 微細組織 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
鏡肌を伴う断層運動の力学特性を明らかにするためにCarrara marbleを試料とし,高速摩擦試験と二軸摩擦試験(クリープ実験)を行った.また実験回収試料と天然に露出するチャートと石灰岩に発達する鏡肌の軟X線照射によるXANES測定を行った.実験条件は,すべり速度0.10 m/s,垂直応力1.0 - 10.0 MPa,すべり変位量は最大5 mと,すべり速度30 um/s,垂直応力10 - 20 MPa,すべり変位1.1 mm - 111.5 mmとした. 高速摩擦試験によって,鏡肌の発達の程度と摩擦係数の変化に関するデータを取得することができた.二軸摩擦試験ではすべり距離が短いために,摩擦係数に影響を与える程度には鏡肌は発達しなかった.実験で得られた結果をまとめる.1)鏡肌はすべり変位と垂直応力が大きいほど良く発達する.約30 cmのすべり変位で比較した場合,1.0 MPaの垂直応力では,すべり面の約6 %の領域でのみ鏡肌が認められるが,5.0 MPaの垂直応力では鏡肌は約40 %にも達する.2)鏡肌は垂直応力が大きいほど,短いすべり変位で発達するようになる.3)3.0 MPaまでの低い垂直荷重の実験では,鏡肌の形成に伴い摩擦係数の劇的な低下は見られないが,5.0 MPaでは鏡肌の形成に伴い低い摩擦係数(~0.4)を示すようになる.4)二軸摩擦試験でも鏡肌は形成された.これらの結果は,地震性すべりでも非地震性すべりでも鏡肌は形成され,そして一旦鏡肌が形成されると摩擦係数は極端に低下することを示している.現時点では天然に露出する鏡肌を伴う断層のすべり挙動までは明らかにできていないが,鏡肌の発達は断層運動に大きな影響を与える事が明らかとなった. 鏡肌のXANES測定では,蛍光収量法と全電子収量法を適用した.その結果は,鏡肌面を構成する物質は結晶質であることを強く示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
① 天然試料の観察:鏡肌の微細組織と形成メカニズムの普遍性と特異性を明らかにするために,28年度に引き続き天然試料の微細組織のキャラクタリゼーションを以下の様に行う.1)まず鏡肌面をFE-SEMを用いて観察する.その後,AFMを用いた観察を開始する.東京大学で取得したAFMのデータは,広島大学において詳細な画像解析を行う.2)鏡肌面に直交する面で岩石薄片を作成し,偏光顕微鏡とSEMとFE-SEMを用いて微細組織の観察を行う.3)集束イオンビーム装置,イオンシニング装置を用いて鏡肌面から超薄切片TEM試料を作成しATEMにより鏡肌の微細組織を観察する. ② 摩擦実験:二軸剪断試験機と回転式高速摩擦試験機を用いた大理石とチャートの摩擦実験を継続する.実験では,すべり速度,垂直応力,すべり距離が鏡肌の発達程度と摩擦係数に与える影響を把握する.鏡肌が形成された実験では,「天然試料の観察」と同じ手法を用いて,回収試料の微細組織観察を行う. ③XANES測定結果は,鏡肌面を構成する物質は結晶質であることを示唆しているが,このことを透過型電子顕微鏡による鏡肌の直接観察から証明することも,今後の重要な課題とする.
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