研究課題/領域番号 |
16H04067
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 潤一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (10435836)
|
研究分担者 |
吉村 寿紘 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90710070)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 火山ガラス / 有孔虫 / 酸素同位体 / トバ火山 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
本年度の本研究課題の最大の成果は,インド洋掘削コアの層序(stratigraphy)を詳細に構築したことであった.堆積物中に含まれる浮遊性有孔虫の殻を単離し,その酸素同位体比を測定した.その結果,堆積速度は千年あたり16cmであったことが明らかになった.この堆積速度は非常に高い.しかし,この結果はスランプや混濁流堆積物の可能性ががなく,連続的に堆積した「整然層」であることを示している.このような堆積物を用いることで,超・高時間解像度のベンガル湾の古気候変動を知ることが可能になる.この結果は,並行して行った放射性炭素年代測定の結果とも整合的であった. 本研究課題のハイライトである,海底下12m付近に挟在する火山灰層についても検討を進めることができた.レーザーアブレーション型誘導結合プラズマ質量分析計LA-ICP-MSを用いた火山ガラス試料の主要・微量元素組成の分析およびICP-QMSを用いた火山ガラス試料の希土類元素分析から,約7万3000年前のインドネシア・トバ噴火を起源とする火山灰層 (Younger Toba Tephra; YTT) である可能性が極めて高くなった.YTTは,インド洋のベンガル湾や南シナ海,アンダマン海などで広く報告されており,今回の化学分析の結果は,先行研究で示された化学的特徴と一致した.今回は,大陸棚のごく浅い場所でYTT火山灰層が回収され,火山灰の分布について新たな知見を得るに至った. また,この火山灰層を含む上下位の堆積物の主要,微量元素組成を測定した結果,後背地であるインド亜大陸東部の氷期‐間氷期スケールの気候変動について新たな知見が得られた.この結果は,現在論文投稿中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の繰り越しが発生したものの,当該年度までの間,本研究は概ね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で,層序に関する検討が大きく前進した.今後の研究では,さらにトバ火山灰の層準の周辺に注目し,その火山灰層を含む上下20cmの層準について,超・高解像度サンプリングを行う.この堆積物から古気候に関するプロキシ(特にアルケノン古水温指標)を抽出・分析し,トバ火山による気候変動について検討する.これと並行して,火山灰層の火山ガラスのストロンチウム,ネオジム,鉛の放射性起源同位体組成を分析し,先行研究との比較を通して本研究で扱う火山灰層の化学的特徴について考察する.
|