研究課題/領域番号 |
16H04069
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡崎 裕典 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80426288)
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研究分担者 |
杉崎 彩子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (20595128)
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30509724)
佐川 拓也 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (40448395)
堀川 恵司 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (40467858)
松崎 賢史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員 (50728582)
久保田 好美 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (80710946)
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (90335919)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 北太平洋 / 黒潮 / 中深層水 / 最終氷期 / 最終退氷期 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年の白鳳丸KH16-6航海において日本列島南方で採取した海底堆積物試料の分析を進めた。具体的には、遠州灘で採取したSt2-PC, 西七島海嶺で採取したSt3-PCおよびSt5-PCの3本の堆積物試料について、年代モデルを確立するために必要な酸素同位体比と放射性炭素年代測定を行うため、堆積物の洗い出しと有孔虫個体の拾い出しを進めた。また、黒潮域の水温変化を復元するためアルケノン分析を行った。これまでにSt2-PCおよびSt5-PCの洗い出しは完了し、有孔虫個体の拾い出しを進めている。なお、底生有孔虫の産出が乏しいため炭素安定同位体比測定が可能な試料と層準が限定されることがわかった。アルケノン古水温は3本のコア試料で最終氷期以降と想定される層準の分析が完了した。放射性炭素年代測定はSt3-PCにおいて3点測定したところ、予想外に古い値が得られた(コア深度約1 mで25000年より古い)。白鳳丸KH16-6航海において採取した表層海水試料中の珪藻群集組成分布を調べ、黒潮流軸とその南北で群集組成が異なることを見つけた。平成28年度中に年代軸が確立された新青丸KS15-4 St3-PC2試料(九州‐パラオ海嶺で採取)については、複数の浮遊性有孔虫種の酸素同位体変化が得られ、表層種の酸素同位体比変化パターンはアルケノン水温変化とよく一致していた。このほか同試料中の浮遊性有孔虫種Globigerina bulloidesの殻重量および殻密度測定を行ったところ、最終氷期に高く完新世に向かって殻重量・密度ともに低下傾向が認められた。このことは北西太平洋中緯度域の水深2800 m付近の水塊の炭酸イオン濃度変化を反映している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新青丸KS15-4航海および白鳳丸KH16-6航海で採取した海底堆積物試料の分析がマルチプロキシで進んでいる。一方で堆積物コア試料の年代軸はKS15-4 St3-PC2では確立されているが、KH16-6航海で採取した試料の年代軸は確立されていない。底生有孔虫殻の産出が予想以上に少ないため中深層循環の議論が難しい。
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今後の研究の推進方策 |
時空間分布を議論するためには年代軸が良く確立された複数の堆積物コア試料が必要であるため、年代モデル構築を重点的に行い、すでにアルケノン水温と浮遊性有孔虫の酸素同位体比、珪藻群集をはじめとした微化石群集から最終氷期-退氷期における黒潮流路の制約を行う。中深層水循環像については、底生有孔虫殻の産出が少ないため、放射性炭素年代ではなく、炭素安定同位体比を中心にデータ集める。
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