研究課題/領域番号 |
16H04071
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
栗谷 豪 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80397900)
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研究分担者 |
中島 淳一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30361067)
吉村 俊平 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20706436)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 火山 / 噴火 / マグマ / マントル / 防災 |
研究実績の概要 |
本研究では、東北本州弧北部~千島弧西部の代表的な活火山について、長期的な噴火活動のポテンシャルを評価することを目的として、A.火山岩の解析に基づくマグマ生成条件の推定、B.マントルの温度・流体量についての三次元分布の描出、C.ウェッジマントル内におけるスラブ流体の速度場の推定、D.各活火山下のマントルにおけるマグマの生成率の推定、の各課題を実施する。当初は、対象地域に分布する火山を同じウェイトで解析する予定であったが、より確実に成果を挙げるため、東北本州弧の島弧横断方向の断面として岩手山-秋田駒ケ岳-目潟のライン、千島弧の島弧横断方向の断面として十勝-利尻、そして東北本州弧~千島弧の島弧縦断方向の断面として岩手山-八甲田-有珠-阿寒-爺爺岳のラインに分布する火山を優先することとした。 そこで課題Aについては、主に秋田駒ケ岳を対象に物質科学的解析を行った。全岩主成分組成、微量元素組成、同位体組成の分析を行い、さらに斑晶とメルトとの熱力学的平衡関係やカンラン石に含まれるガラス包有物を利用して、含水量の推定を行った。その結果、マグマ生成時のマントルの温度・圧力・含水量・部分融解度の推定を行った。また、秋田駒ケ岳に加え、さらにマグマ生成条件の推定を終えている目潟と岩手山を対象に課題Cを遂行し、スラブ流体のスラブからの分離場所、および流路の推定まで行った。ここまでの成果については、論文にまとめているところである。 課題Bについては、栗駒山周辺で発生する深部低周波地震の振幅比を用いて、地震の発震機構解を推定した。その結果、P波とS波の振幅比を説明するためには、CLVDなど非ダブルカップル成分を考える必要があることが明らかになった。また、富士火山、箱根火山周辺の地震波減衰構造を推定し、マグマ溜まりの位置を再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、平成29年度までに秋田駒ケ岳、十勝、利尻、八甲田、阿寒、爺爺岳の全ての火山で課題Aを終える予定であったが、十勝、阿寒、爺爺岳については化学分析まで、八甲田については試料が未採取である。このため、予定より3ヶ月程度の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は引き続き、積み残した課題AとBを前半頃まで実施し、その後、課題CとDを実施する予定である。火山岩の化学分析まで終えている十勝、阿寒、爺爺岳については4月以降に速やかに解析を進め、また八甲田については5月中に試料採取を行って、7~8月頃までには全ての火山について課題Aを終了する。一方、課題Bについては特に深部低周波地震の波形解析により発生メカニズムを検討し、東北地方太平洋沖地震前後で低周波地震の発生機構に変化がないか精査する。さらに各活動的火山周辺の地震波減衰構造を推定し、マグマ供給系に地球物理学的な制約を与える。その後、岩手山-秋田駒ケ岳-目潟のライン(東北本州弧の島弧横断方向の断面)、十勝-利尻(千島弧の島弧横断方向の断面)、岩手山-八甲田-有珠-阿寒-爺爺岳のライン(東北本州弧~千島弧の島弧縦断方向の断面)を対象に、物質科学的手法と地震学的手法を融合することによってウェッジマントル内におけるスラブ流体の速度場の推定を行い(課題C)、その結果を解析して、岩手山、秋田駒ケ岳、目潟、十勝、利尻、八甲田、有珠、雌阿寒、爺爺岳の各火山の長期平均的なマグマ生成率を推定する。
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