研究課題
本研究では,東北本州弧~千島弧の代表的な活火山を対象に,長期的な噴火活動のポテンシャルを評価することを目的として,各火山の玄武岩質噴出物の岩石学的解析から推定されるマントルの温度・含水量およびスラブ流体の上昇経路と、同地域のマントルを対象とした地震学的解析から推定される3次元構造を,比較・融合させようとするものである.物質科学的研究については,昨年度から積み残した岩石学的解析(八甲田・渡島大島・十勝・雌阿寒)を行い,マグマの含水量推定を行った.そしてこれらの火山,および既に解析を終えていた東北本州弧の火山について,マグマ生成深度におけるマントルの温度・含水量条件の推定,およびスラブ流体の経路についての制約条件を与えた.一方,地震学的研究については,島弧火山へのマグマ供給系の解明を目的に,東北地方南部から中部日本にかけての領域で3次元P波減衰構造の推定を行い,既存の地震波速度モデルと比較を行った.その結果,高減衰域と低速度域は概ね一致するが,太平洋スラブ直上からマントルウエッジに伸びる高減衰領域は地震波速度では顕著な低速度を示さないことが明らかになった.また,栗駒山,蔵王山,肘折山下で発生する深部低周波地震のメカニズム解を決定したところ,蔵王山においては2011年東北地方太平洋沖地震を境に低周波地震のメカニズム解が系統的に変化していることが見出された.地殻深部のマグマ供給系の応力状態を理解する上で重要な観測事実である.このように,岩石学的解析と地震学的解析のそれぞれにおいて,顕著な成果を得られることができたが,昨年度から繰り越されていた数ヶ月程度の研究計画の遅れを最後まで解消することができず,両手法の本格的な比較・融合的研究については今後引き続き行うことになった.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
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10.1038/s41598-018-37374-0
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Frontiers in Earth Science
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