研究課題
これまですべての研究者がアモルファス氷(pure H2O, 不純物を含むもの,紫外線照射をしたもの)を広い温度範囲で固体と考えてきた.しかし,代表者らは不純物を含むアモルファス氷(H2O:NH3:CH3OH=10:1:1)に10Kで紫外線を照射した試料を,その後,紫外線照射をやめて昇温させると,70-140Kで液体になっていることを発見した.本研究計画では,アモルファス(固体)と液体を区別する一般的手法である誘電測定により,広い組成,紫外線照射の有無でこれまでアモルファス氷と考えてきたものが,固体であるか液体であるかを明らかにする.これは,惑星科学的にもこれまでの描像を全面的に書き換えるかもしれない重要な課題であり,物理化学的にも興味深い.これまでの実験では,冷凍機の振動のため,冷凍機を停止しないと信頼性のある物性測定はできなかった.そこで,本年度は,振動の影響がなく誘電測定が可能な真空チャンバーおよび誘電測定系を製作した.冷凍機の振動が真空チャンバーおよび試料に伝わらない工夫を施した.前者は冷凍機と真空チャンバー間を柔らかいベローズでつなぎ,かつ冷凍機を載せる架台を重量のあるものにし,それを床にアンカーで固定した.後者は冷凍機の先端と試料を超高純度の無酸素銅極細細線を束ねたもので接続した.さらに,誘電測定用のアモルファス氷(pure H2O, H2O:NH3:CH3OHなど)を蒸着するための試料ホルダーも製作した.
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した通り,振動の影響がなく誘電測定が可能な真空チャンバーおよび誘電測定系を製作した.冷凍機の振動が真空チャンバーおよび試料に伝わらない工夫を施した.前者は冷凍機と真空チャンバー間を柔らかいベローズでつなぎ,かつ冷凍機を載せる架台を重量のあるものにし,それを床にアンカーで固定した.後者は冷凍機の先端と試料を超高純度の無酸素銅極細細線を束ねたもので接続した.さらに,誘電測定用のアモルファス氷(pure H2O, H2O:NH3:CH3OHなど)を蒸着するための試料ホルダーも製作した.以上から,計画通り順調に実施できたと判断した.
基本的には,当初の計画通り研究を推進していくことで,研究目的を十分に達成できると考えている.平成28年度には実験装置を組み上げたので,平成29年度には誘電緩和時間の測定おこなう.10KでH2OやH2O:NH3:CH3OHなどのアモルファス氷を蒸着法で作製し,ついで紫外線を照射する.紫外線照射後に温度を上昇させ,誘電率の周波数依存性の温度変化を測定する.
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/astro/index.html