研究課題/領域番号 |
16H04073
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
臼井 寛裕 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (60636471)
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研究分担者 |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
中田 亮一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (50726958)
黒川 宏之 東京工業大学, 地球生命研究所, JSPS特別研究員 (80713643)
上野 雄一郎 東京工業大学, 理学院, 准教授 (90422542)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 火星隕石 / XAFS / SIMS / 化学種分析 / 水素同位体分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、「火星隕石に含まれる表層成分の水素・硫黄同位体比と酸化還元敏感元素の化学種変化から,火星の水の散逸と表層酸化過程の関係を明らかにすること」を目的とする。H28年度は、研究実施計画1・2・4を中心に研究を進めた。 【計画-1:局所XAFS分析による,火星表層成分のFeとSの化学種同定】本研究で対象とする火星隕石中の衝撃ガラスは,天体衝突の影響により火星大気・表土成分の両者が混入していることが示唆されている。H28年度は、放射光施設(SPring-8)において、火星隕石中に含まれる衝撃ガラスのS-XAFS分析を行った。結果、隕石試料から初めて、火星表層由来の酸化型硫黄(硫酸イオン)を検出することに成功した。また、流体から晶出したことが明らかな火星隕石中の炭酸塩に着目し、放射光施設(Photon Factory)においてFe-XAFS分析を行った。結果、炭酸塩を生じさせた流体には、炭酸塩と同時に緑泥石やゲーサイトが含まれていることが判明した。これらの観察事実は、火星にかつて存在していた変成流体の温度や化学組成条件の推定に強い制約を与えると考えられる。 【研究計画-2:SIMS分析に基づく,各地質時代における表層水のD/H比の決定】カーネギー研究所に設置されたSIMS(NanoSIMS 50L)を用い、計画1でXAFS分析を行った炭酸塩に含まれる水素同位体比(D/H)を決定した。 【研究計画-4:水散逸モデルに基づく,水の消失時期・消失量および表層酸化との関係性の解明】計画2で得られたD/H比をもとに、過去40億年間の水散逸量を計算した。求められた散逸量は、地質記録から推察されている古海洋の海水量よりも明瞭に小さく、このことは、古海洋の多くが凍土層・含水鉱物などの形で現在も地下に存在していることを示唆する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光施設および研究協力者の管理するSIMSの両者に関し、計画通りの分析時間が確保できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでおり、当初の予定に従い、今後も引き続き研究計画1-4を順次進めていく。
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