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2017 年度 実績報告書

高圧下微小破壊音測定実験によるスラブ内地震発生メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H04077
研究機関愛媛大学

研究代表者

大内 智博  愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (60570504)

研究分担者 雷 興林  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (70358357)
GREAUX Steeve  愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特定研究員 (90543166)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードカンラン石 / スラブ / 微小破壊音 / 水 / 断層
研究実績の概要

本年度では、スラブ内浅部の温度圧力条件下(1-3 GPa, 500-1000℃)における含水ダナイト(カンラン石多結晶体)及び含水ハルツバーガイト(カンラン石+斜方輝石多結晶体)の変形実験をSPring-8にて行った。変形中の試料中より発生する微小破壊音(AE)は、これまで開発してきたマイクロAE測定システムを用いて測定を行った。その結果、含水ダナイトでは系に水性流体が存在することによって、見かけの定常クリープ強度が大幅に低下したものの、カンラン石中に溶存する水の量に対するクリープ強度の依存性は見出されなかった。また、900℃以下の水に飽和した条件下では、変形中に多数のAEが測定されたことから、半脆性流動が支配的であったことが明らかとなった。一方、試料破断の際の断層すべり速度は水に飽和した条件下では不飽和な条件下と比べていずれも1ケタ程度遅いことが明らかとなった。これは、水性流体は断層形成やすべりを促進するわけではないことを意味している。また、含水ダナイトの破壊はGoetze則(差応力が封圧を越えた場合にのみ断層形成が可能)を満足したため、天然の差応力下(0.3 GPa以下)で含水ダナイトが破壊するのは難しいと推定される。以上の結果は、国際誌への投稿論文として取りまとめつつある。
上記と同様に、含水ハルツバーガイトでも系に水性流体が存在することによって、見かけの定常クリープ強度が大幅に低下した。また断層すべり速度は水に飽和した条件下では不飽和な条件下と比べて1ケタ程度遅い結果となった。しかし含水ハルツバーガイトの破壊はGoetze則に従わず、0.3GPa程度の低い応力下でも断層形成に至るといった予想外の結果が得られた。これは、天然の差応力下でも含水ハルツバーガイトにて断層形成に至りうることを意味している。この結果については、現在のところ国際誌へ投稿準備中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度において、計画していた「スラブ浅部~中部条件下でのカンラン岩の一軸圧縮試験」が概ね完了し、含水ダナイトに関する結果が国際誌への投稿論文として取りまとめつつあるほか、含水ハルツバーガイトに関しても投稿準備中である。そのため、次年度(平成30年度)に行う予定である「スラブ深部条件下でのカンラン岩の一軸圧縮試験」が予定通り行える見通しとなっている。そのため、計画は概ね順調に進行していると評価できる。また、主に昨年度までに得た成果がNature Geoscience誌にて公表され(Ohuchi et al., 2017 Nature Geo.)、産経新聞、日本経済新聞、時事通信、日刊工業新聞、テレビ愛媛や愛媛新聞などによって報道されるといった大きな成果を得た。また本研究に関連し、マントル内の地震波物性に関するレビュー論文がNature誌(Irifune & Ohuchi, 2018 Nature)掲載されるといった、予想外の成果が得られた。この成果も含めると、本年度の達成度は極めて高いと評価できる。

今後の研究の推進方策

マイクロAE測定システムの開発は一通り完了したものの、震源位置の決定精度を引き続き向上すべく、継続して技術開発を行っていく。次年度より、予定通り「スラブ深部条件下でのカンラン岩の一軸圧縮試験」をSPring-8にて行う。それとともに、現在までに投稿論文として取りまとめた(あるいは取りまとめつつある)成果については、国際誌にて公表することを目指す。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Deformation-induced crystallographic-preferred orientation of hcp-iron: An experimental study using a deformation-DIA apparatus2018

    • 著者名/発表者名
      Nishihara Yu、Ohuchi Tomohiro、Kawazoe Takaaki、Seto Yusuke、Maruyama Genta、Higo Yuji、Funakoshi Ken-ichi、Tange Yoshinori、Irifune Tetsuo
    • 雑誌名

      Earth and Planetary Science Letters

      巻: 490 ページ: 151~160

    • DOI

      10.1016/j.epsl.2018.03.029

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Oxidation softens mantle rocks2018

    • 著者名/発表者名
      Irifune Tetsuo、Ohuchi Tomohiro
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 555 ページ: 314~315

    • DOI

      10.1038/d41586-018-02828-y

  • [雑誌論文] Flow behavior and microstructures of hydrous olivine aggregates at upper mantle pressures and temperature2017

    • 著者名/発表者名
      Ohuchi, T., Kawazoe, T., Higo, Y., Suzuki, A.
    • 雑誌名

      Contrib. Mineral. Petrol.

      巻: 172 ページ: 65

    • DOI

      10.1007/s00410-017-1357-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intermediate-depth earthquakes linked to localized heating in dunite and harzburgite2017

    • 著者名/発表者名
      Ohuchi Tomohiro、Lei Xinglin、Ohfuji Hiroaki、Higo Yuji、Tange Yoshinori、Sakai Takeshi、Fujino Kiyoshi、Irifune Tetsuo
    • 雑誌名

      Nature Geoscience

      巻: 10 ページ: 771~776

    • DOI

      10.1038/NGEO3011

    • 査読あり
  • [学会発表] High pressure generation up to 24 gigapascals using a D-DIA apparatus combined with jacketed anvils.2018

    • 著者名/発表者名
      Ohuchi, T.
    • 学会等名
      Core Mantle Evolution International Symposium and FY2017 Annual General Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Shear localization in peridotites and the occurrence of intermediate-depth earthquakes2017

    • 著者名/発表者名
      Ohuchi, T., Lei, X., Ohfuji, H., Higo, Y., Tange, Y., Sakai, T., Fujino, K., Irifune, T.
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] スラブ内浅部条件下における含水カンラン岩の変形実験2017

    • 著者名/発表者名
      大内智博,雷興林,肥後祐司,丹下慶範
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2017年会
  • [学会発表] Toward the in-situ deformation experiments under the lower mantle conditions using D-DIA apparatus2017

    • 著者名/発表者名
      大内智博,八木健彦
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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公開日: 2018-12-17  

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