研究課題/領域番号 |
16H04079
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 順司 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60378536)
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研究分担者 |
鍵 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
石橋 秀巳 静岡大学, 理学部, 准教授 (70456854)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炭素同位体 / ラマン分光分析 / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,高い波数分解能を持つラマン分光分析システムの開発に注力した.極めて長い焦点距離(200 cm)を持つ分光器を作製することにより,取得スペクトルの波数分解能を大幅に精細化させることに成功した.その意義を本研究の主題と照らし合わせて以下に記す. 本研究で行う炭素同位体分析は,ラマン分光分析で得られる13CO2ピークと12CO2ピークの強度比を利用する.この手法によって地球化学的に意味のある炭素同位体比精度を得るには分光器に様々な改良をほどこす必要がある.ここ数年,筆者らはリソスフェアに広く分布するCO2流体の流体密度を分光スペクトルから精密に測定する手法を開発してきた.この分光密度測定法はこれまで密度測定が極めて困難であった直径1μm以下および超高密度(> 1.18 g/cm3)のCO2流体包有物にも適用でき,測定に要する時間も数分程度と短い.このような特徴は流体包有物の炭素同位体比を測定する上でも極めて有効に働く.また,導入した分光分析装置は普及機器の4倍をこえる波数分解能を有するため,炭素同位体比測定精度の飛躍的な向上が期待できる.例えば,普及機器の上限値に近い波数分解能(約0.28 cm-1)がさらに向上すると,ラマン分光分析法による炭素同位体比の測定精度はついに1‰オーダーに到達し,マントルウェッジ炭素の起源を究明する上で強力な武器になりうる. そこで,これまで75 cmであった分光装置内の焦点距離を200 cmまで大幅に延ばすことにより,取得スペクトル幅を大幅に狭め,従来と比べて飛躍的に高い波数分解能を持つ装置に仕上げた.この措置はピーク強度の誤差を低減させるため,13C/12Cの測定精度を向上させ,誤差1‰程度での炭素同位体比測定を可能にするであろう.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,予定していた分光器の改良作業を滞りなく終えることができた.目標としていた波数分解能が出ており,次年度以降の作業への基礎を固めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究作業は,おおむね順調に進展したため,現時点で研究計画の変更は検討していない.しかし,励起レーザーとして使用していたアルゴンイオンレーザーの劣化の兆しを感じるようになったため,次年度以降にその補修や代替を検討する必要が出てくる可能性がある.その場合は,一部の研究作業をレーザーの補修作業に差し替えるなど,対応が必要になってくるかもしれない.
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