太陽系の進化を明らかにする上で隕石の研究は欠かせないが、ほとんどの隕石種で母天体が確定していない。その理由は、小惑星表面が宇宙風化によって反射スペクトルが変化するためである。はやぶさが持ち帰った小惑星イトカワの砂はS型小惑星がLLコンドライトの母天体であることを明確にしたが、宇宙風化と反射スペクトルの関係を解明するためにはイトカワ粒子表面の風化領域のみを回折限界近い空間分解能で分析する必要がある。そこで本研究では申請者がこれまでに開発したミラー光学系反射分光分析装置を高度化することでイトカワ粒子の反射スペクトルを1μmの空間分解能で明らかにすることを目指す。 これまでに開発した反射分光分析装置を高度化すべく、4Wの白色レーザー、分光器、近赤外光検出器、可視光検出器を導入した。SOL製の分光器とフォトンカウンティンターを制御するプログラムを開発してスペクトルを取得できるようになった。フォトンカウンターはメーカー提供のDLLを利用し、これをLabVIEWに組み込んだ。これにより分光器とフォトンカウンターの両者をLabVIEW上で開発したプログラムによって連携させて動作させることが可能になり、スペクトルの取得ができるようになった。次に、これまで高次回折光がカットできなかったため、これをカットするためのフィルターとフィルターホイールを導入し、これをRS232CによってLabVIEWで制御可能とした。またフィルターを介した光学系でのスペクトル測定プログラムを開発し、これによって可視から近赤外にいたる幅広い波長領域でスペクトル測定が可能となった。レーザー光をアポクロマートレンズで集光したのち10μmのアイリスで点光源化し、これをコーティングを施した楕円ミラーを使って再度集光することによって、極限的な集光に成功した。
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