研究課題/領域番号 |
16H04086
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 智彦 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30260053)
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研究分担者 |
前山 伸也 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (70634252)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラズマ / 乱流 / ジャイロ運動論 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本課題の研究目的は、高温磁化プラズマ中に普遍的に観測される電磁乱流揺らぎが、どのような経路を経て非可逆な散逸に至るか、その道程を明らかにし、位相空間上の散逸領域と慣性領域を理論的・数値的に特徴付けること、そこからエネルギー散逸の非等方性を明らかにすることである。さらに、その結果を敷衍し、乱流抑制や輸送の飽和機構の理解へと還元することを目指している。 平成28年度は、まず、(2+1)次元乱流における垂直方向カスケード過程と定常スペクトル構造の解明に向け、ジャイロ運動論的シミュレーション研究を開始した。特に、(2+1)次元定常乱流を実現するために、大きなスケールにおいてエントロピー生成を行うためのランダムなソースと逆カスケードによる長波長成分の蓄積を避けるための抵抗を新たに導入した。これにより定常乱流状態での分布関数揺動の位相空間スペクトル構造の解析が可能となった。比較的低解像度の場合には、既に定常乱流中での分布関数揺動の波数空間および速度空間スペクトル構造が得られており、平成29年度にかけ、より高解像度での乱流解析を進めている。 さらに上記課題と並行して、GKVコードを用いてトーラス配位でのイオン温度勾配乱流とゾーナルフローのジャイロ運動論的シミュレーションを実行し、エントロピー揺動の波数空間上の伝達とゾーナフローによる剪断効果との関連に関する解析に着手した。当初計画に先んじて、すでに初期的な成果が得られており学会でも発表を行っている。 また、今後、電磁揺動を含めたプラズマ乱流の解析を進めるための準備として、簡略化磁気流体モデルを用いたAlfven乱流のシミュレーション・コードを開発した。これはすでに磁気圏プラズマ中の乱流解析にも応用され、その初期結果が出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記概要にまとめたように、磁場に垂直方向のカスケード過程と定常スペクトル構造の解析を行う(2+1)次元ジャイロ運動論的シミュレーション・コードにおいて、当初計画通り、ランダムな外部ソースからの定常的なエントロピー注入を実現できるように拡張を行った。その結果、実空間および速度空間の双方で同時に進行する位相空間上のカスケード過程の解析が可能となった。現在、実空間および速度空間の解像度や衝突周波数を変化させ、スペクトル構造の同定を進めている。 トーラス系でのイオン温度勾配乱流におけるエントロピー伝達過程の解析は、当初計画を上回って進展しており、エントロピー揺動の伝達率とゾーナフローによる剪断率との間に対応関係が新たに見出された。この成果は、トカマクなどの磁場閉じ込め核融合プラズマにおける乱流輸送抑制とその物理機構の理解に新たな視点を与えるものである。 さらに、当初計画では予定されていなかった電磁揺動効果についても考察を進めるため、簡略化磁気流体モデルを用いたAlfven乱流のシミュレーション・コードを開発した。これは既に、磁気圏-電離圏結合系でのオーロラ乱流の解析にも応用されている。 以上のように、本課題の進捗状況は当初計画を上回り、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに進めてきた研究をさらに発展させ、その成果の中間取りまとめを行う。具体的には、上述した二つのサブ課題について、それぞれ、研究成果発表と結果の取りまとめを行う。このうち、エントロピー揺動の伝達率とゾーナフローによる剪断率との関連については、国際共同研究として韓国の研究者との議論をもとにさらに解析を進めることを予定している。 上記のサブ課題については研究がほぼ軌道に乗っており、当初計画を上回ってさらに研究が進展した場合、平成30年度からの開始を予定している次のサブ課題、(3+1)次元乱流における平行方向カスケード過程と定常スペクトル構造の解明、に関する研究準備に着手する。
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