研究課題/領域番号 |
16H04090
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三浦 永祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (10358070)
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研究分担者 |
山崎 淳 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10436537)
豊川 弘之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (80357582)
藤原 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (90552175)
黒田 隆之助 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, ラボチーム長 (70350428)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レーザー加速 / プラズマ / 量子ビーム / 高性能レーザー / レーザーコンプトン散乱ガンマ線 / 中性子 |
研究実績の概要 |
本研究は、高出力のフェムト秒レーザーパルスによって生成されるプラズマを利用した電子加速(レーザー加速)により発生する高エネルギー電子線とフェムト秒レーザーパルスを相互作用させ、レーザーコンプトン散乱により発生するガンマ線を用いた光核反応により中性子を発生することを目的としている。具体的には、レーザー加速により200 MeVのエネルギーの揃った準単色電子線を発生し、波長400 nmのレーザーパルスとのレーザーコンプトン散乱によって光子エネルギー1.7 MeV以上のガンマ線を発生し、ベリリウムでの光核反応を用いて中性子を発生する。 今年度は実験に用いるフェムト秒チタンサファイアレーザー装置の高性能化を進めた。レーザーの高出力化を図るために採用したパルス伸張器とパルス圧縮器に異なる溝本数の回折格子を用いるシステムを構築し、目標としていたパルス幅50 fsのプレパルスの少ない高品質なフェムト秒レーザーパルスを得た。また、レーザーコンプトン散乱により高エネルギーのガンマ線を発生するため、波長変換結晶を用いたチタンサファイアレーザーの二倍高調波光(波長400 nm)発生に着手した。 レーザーコンプトン散乱によって発生するガンマ線の収量を増強するには、レーザー加速電子線の電荷量を増強する必要がある。チタンサファイアレーザー(波長800 nm)よりも長波長の波長が1500 nmの中赤外域のフェムト秒レーザーパルスを用いることにより、レーザーパワーが半分程度で同じエネルギーを持つ準単色電子線の電荷量を10倍程度増強できることをシミュレーションにより示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザー加速準単色電子線の高エネルギー化を図るため、チタンサファイアレーザー装置を高出力化すると共に、高品質な高出力フェムト秒レーザーパルスを得るため、大幅なレーザー装置全体の改造を強いられたが、その改造を完了できた。しかし、パルス伸張器とパルス圧縮器を同時に改造したこと、高品質のフェムト秒レーザーパルスを得るために高い精度でパルス伸張器を調整する必要があったため、想定以上に時間を要した。 一方、レーザー加速準単色電子線の電荷量増強のための条件を調べるためにシミュレーションを並行して進めてきたが、その過程で1500 nmの中赤外域のフェムト秒レーザーパルスを用いることにより飛躍的な増強ができることを示し、レーザー電子加速物理として非常に興味深い結果を得ることができた。 シミュレーションでは当初想定していなかった重要な成果も得られているが、レーザー装置の改造に時間を要してレーザー電子加速実験には至っていない。プラス面とマイナス面が混在しており、全体として見れば進捗がやや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
早急にレーザー電子加速実験を行い、ピークパワーを30 TWまで高出力化したフェムト秒チタンサファイアレーザーパルス(波長800 nm)を長さが5mm 程度のヘリウムガスジェットに照射し、レーザー電子加速により200 MeVのエネルギーの揃った準単色電子線を発生する。この電子線とフェムト秒チタンサファイアレーザーパルスの2倍高調波光(波長400 nm)を相互作用させ、レーザーコンプトン散乱によりベリリウムの光核反応の閾値エネルギー(1.7 MeV)近傍の光子エネルギーを持つフェムト秒準単色ガンマ線パルスを発生する。このガンマ線を用い、ベリリウムでの光核反応により中性子を発生する。飛行時間法を用いて中性子のエネルギー分布を測定し、エネルギーが keV領域の低速中性子のみが発生することを実証し、本研究で提案するレーザー駆動中性子発生法の原理実証を行う。
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